磨羯宮のプライベートな部屋の中。
床に座り込むミロ様と、彼に群がりウットリと擦り寄る二匹の猫ちゃん。
金茶猫のアイオリア様と、本物の黒猫のカプリコちゃん。
その横には、黒猫姿のシュラ様を腕に抱っこして床に座り込む私。
更に、直ぐ目の前には不良座りで屈んだデスマスク様、表情は苦々しく歪んでいる。
アイオロス様は私達から少し離れた場所で、変わらず正座のままウルウルと涙を流していた。


「ミャ、ミャミャミャン、ミャー、ミャミャン。」
「アンヌ。シュラが何か喋ってるみたいだけど?」
「そうは言ってもですねぇ。猫語なので何を言いたいのやら、サッパリ分からず……。」
「シュラの事だ。もっと顔にオッパイを押し付けろっつってンじゃねぇの?」


全く、どうしてこうもデリカシーのない言葉を、私に対して平然と吐けるのでしょう、デスマスク様は。
とはいえ、強ち間違いでもないところが痛い上に、言い返せない理由だ。
私は小さなシュラ様の身体を、自分の顔と彼の顔が同じ高さになるよう持ち上げた。
その目を覗き込んで、何が言いたいのか探ろうとしたが、シュッと鋭い猫目がジッとコチラを見返すだけで、結局は、何も分からない。


「ミャ、ミャー。ミャミ、ミャミャッ。」
「う〜ん、サッパリ分かりません。」
「腹でも減ってるんじゃないのか?」
「今さっき、シッカリ食べたばかりです。」
「じゃあ、トイレとか?」
「したかったら、ソコですンだろ。トイレあるしよ。」


デスマスク様がクイと顎でもって、部屋の隅に設置された猫ちゃんのトイレを指し示す。
言われて部屋を見回すミロ様。
少しだけ落ち着いて、やっと周りの状況を見られるようになったのか、キョロキョロとアチラコチラを眺めて、ミロ様はポカンと口を開けた。


「凄いな、キャットタワーまである……。普段から猫を飼ってる訳でもないのに、随分と用意がイイんだな。」
「それもこれもデスマスク様が全て気を遣ってくださったんです。」
「ま、俺がワザワザ用意したモンより、マタタビ族の身体に上って、ミャーミャー擦り寄る方がイイみてぇだけどな。」
「マタタビ族じゃない! 勝手に変な民族に俺を入れるな!」


そんな言い合いを続けている間にも、アイオロス様は一人、さめざめと涙を流しながら正座を続けている。
何でしょう、このカオスな状況は。
何でしょう、この微妙な空気は。


「取り敢えずは、アフロディーテが意識を取り戻すまで待とうぜ。目が覚めりゃ、アイオロス目掛けて、ココに乗り込ンでくンだろうしな。」
「それでアフロディーテが原因じゃなかったら、どうするんだよ?」
「違ったら違ったで、また一から原因を探りゃイイだろ。そこに暇人な教皇補佐も居る事だし。」
「何故、俺? 俺はもっとアイオリア達と戯れたり転がったりスリスリし合ったり、色々としたい。原因を探っている暇はないぞ。」
「そりゃ、ただ遊ンでるだけだろが、十分に暇だろ。教皇補佐ともあろう者が美味しいドコ取りするつもりか? あ?」


どうせ猫共に嫌われてて、直ぐに逃げられンだから、無駄な願望は止めておけよ。
そう止めの一言を突き刺されて、滝涙が大滝涙に変わったアイオロス様。
そんな彼を見て、デスマスク様とミロ様は、二人同時に大きな溜息を吐いたのだった。





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