金茶猫のアイオリア様の可愛さには、誰もがメロメロになってしまうみたい。
顔を半分だけ出してコチラの様子をジーッと窺っている視線は真剣そのものなのに、猫ちゃんの仕草となると、どうしてこうも可愛く見えるのか。
デスマスク様もアイオロス様も、思わず動きを止めて、アイオリア様の方に目を向けてしまっている。


「オイ、アンヌ……。アレ、ホントにアイオリアか? 何つーか……、破壊的にめんこいな。」
「顔を半分だけヒョコッと出しているのも可愛いし、ジーッと視線を逸らさずコッチの様子を窺っているのも可愛いですし、この距離間と、小さな頭のちんまり感が堪らないですよね……。って、アイオロス様?」


どうかしたのだろうか?
私の眼前、アイオロス様の大きな背中が、フルフルと小刻みに震えているように見える。
えっと……、まさかおトイレを我慢しているとかじゃないですよ、ね?


「あ、あ、ああ……。」
「あ? 何ですか、どうしたのですか?」
「あ、ああ……、ぅアイぅオリぅアあぁぁぁぁぁっ!!!!」


――ビリビリビリッ!


「うおっ?!」
「きゃっ?!」
「ミギャッ?!」


アイオロス様、突然の大絶叫。
デスマスク様と私は勿論、私の横に座っていたシュラ様も、その声に吃驚して身を飛び上がらせた。
そして、離れたキャットタワーのアイオリア様は、ビクビクッと身を竦ませたと同時に、箱の中へと引っ込んでしまった。
普段は勇敢な彼も、何故か猫になると臆病で慎重。
今もコチラの様子を恐る恐る窺っていたくらいだもの。
あの雄叫びに、恐れ戦かない訳がない。


――ゴツッ!!


「痛っ! 何故、殴る?!」
「殴られて当然だろ! 兄貴が自分の弟ビビらせてどうすンだよ?! タダでさえ猫になっちまって困惑してるっつーのに!」
「だって見ろよ! アイオリア、あんなに可愛いんだぞ! 猫の姿ってだけで可愛いのに、あんな可愛い仕草されたら萌えが止まらんだろうが!」
「だからって叫ぶ事ねぇだろが! バカか? バカなのか?! あぁ、アンタは昔から大バカだったな、今、思い出したわ! 萌えとかキモい事を言ってンなっての!」


この非常に低レベルな言い争いは、間に入るだけ無駄なので放っておきましょう。
それよりもアイオリア様です。
すっかり箱の中へと入り込んで、出てくる気配もない。
中で身を縮めて震えているではないだろうか。
その姿がありありと浮かんで、苦笑いが込み上げる。
私はキャットタワーへと近寄ると、アイオリア様が居る箱の中を覗き込んだ。


「アイオリア様?」
「…………。」
「アイオリア様、大丈夫ですか?」
「…………。」


駄目だわ。
私が呼び掛けても、全く動こうとしない、身動ぎ一つもない。
箱の奥で丸まって小さくなり、警戒心でピリピリしているのが伝わってくる。


「ミャッ。」
「わ、シュラ様。どうしましたか?」
「ミャミャッ。」


ポスンと足首に当たる柔らかな感触に、視線を下に向けると、真っ黒な毛の塊の中から、鋭い瞳がコチラを見上げているのが見えた。
いつの間にやら、私の傍まで移動してきていたシュラ様が、スリスリと小さな顔を足首に擦り付けている。
そして、直ぐに、その身を翻すと、ヒョイヒョイと軽やかにキャットタワーを上り始めた。


「ミャッ、ミャン。」
「…………。」
「シュラ様、もしかしてアイオリア様を落ち着かせようとしてます?」
「ミャッ、ミャッ。」


キャットタワーの真ん中辺り、アイオリア様が引き籠もった箱の中へと、シュラ様が入り込んでいく。
スリム体型な猫ちゃんとはいえ、流石に二匹も入ると、ミッチリ感が半端ないですね。
それまでジーッと縮こまっていたアイオリア様も、無理矢理に侵入してきたシュラ様に、ちょっと迷惑気味な渋い表情を向けた。





- 5/6 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -