というか、本当に猫ちゃんがケーキなんて食べて大丈夫なのかしら?
何て考えたところで、既に遅いのだけれども。
お二人共、凄く美味しそうに食べているし、シュラ様に至っては、もっと食べさせてと、私の爪先をカリカリしながら強請ってきている。
アイオリア様も、物凄く何かを言いたげに、まん丸な目を更に見開いて、ジーーーッとコチラを見つめているし。


「ま、まだ、食べたいのですか?」
「ミャッ。」
「ミィッ。」
「ううっ、それは反則です。」


私が尋ねると、猫ちゃん二匹がピッタリ合った呼吸で、後足だけでヒョコッと立ち上がった。
そして、クイクイと前足を振りながら、見事なる催促のポーズを始めたではないか。
この愛らしさと、可愛さと、何処か滑稽な仕草の前では、どんな固い決意だろうと、あっさりと瓦解してしまうだろう。
こんな可愛い猫ダンス、見せ付けられたら、何でもして上げたくなっちゃう。
あのサガ様が、まるで孫を愛でるお祖父ちゃんの如くメロンメロンになってしまうのも、十分に頷ける。


「あと一切れだけですよ?」
「ミャーン。」
「ミィィ。」


――はふはふっ。


先程と同じくらいにカットしたケーキを、立ち上がった姿勢のままで食す猫ちゃん二匹。
じっくり味わっているのか、お口の中で何度も反芻している様子が、また可愛らしい。
でも、何で立ち上がったままなのですか?
疲れますよね、その姿勢。


「ミャミャッ。」
「もう駄目ですよ、これ以上は。」
「ミ、ミィ。」
「駄目です。デスマスク様に怒られちゃいます。」
「ミャー。」


ストンと元の座り姿勢に戻ったシュラ様達は、もっともっとと交互に鳴き声を上げて催促を始めた。
でも、これ以上、ケーキを与えるのは、私もどうかと思う。
可愛くとぼけた顔をして強請ってきたとしても、ジッと愛らしく見つめてきたとしても、そう易々と食べさせて上げる訳にはいかない。


「だ・め・で・す。」
「ミミャー。」


どうやらシュラ様は不機嫌モードに突入してしまった模様。
細めた目を吊り上げて、フンッと鼻を鳴らしてツンと横を向いてしまった。
アイオリア様は、どうしたものかと戸惑った様子で私を見上げ、それから横のシュラ様をチラと横目で見遣った。


「ほらほら、不貞腐れないの。困った猫ちゃんですね。」
「ミ、ミィィ。」
「フンッ。」


すっかり機嫌を損ねたシュラ様は、何を言ってもフンッと鼻を鳴らすだけ。
仕方ないので、ご機嫌取りとばかりに、頭やら喉やら顎下やらを撫でて上げれば、横からアイオリア様も前足を伸ばし、シュラ様の背中をフニフニと突っ付いてくる。
そうされるのが徐々に気持ち良くなってきたのか、シュラ様の喉がゴロゴロと鳴った。


「ゴロゴロ……。」
「ミミッ?」
「眠くなってきたのですか、シュラ様?」
「ゴロゴロ……。」
「ミィィ。」
「アイオリア様も?」


何故か撫でられてもいないアイオリア様まで、その場にペタリと座り込み、目を細めてウトウトし始める始末。
四肢を身体の下に仕舞い込んで、まるでティッシュの箱みたい。
こういうのって……、香箱座りって言うのでしたっけ?
キッチンの床に、ちんまりと二つ並んだ猫頭の付いた小さな箱。
あまりの可愛さに、二匹同時に、頭をワシワシと撫でたら、首を上げたまま完全に目を閉じて、お休みモードに入ってしまった。





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