「あー、また話が逸れたじゃねぇか。」
「す、すまん……。」


その一因はデスマスク様にもあると思いますけれど。
自分が教皇になるとか言い出したから、変な方向に話が進んだんじゃないですか。


「どうする? このまま夕方まで放っておくか?」
「う〜ん……。」
「原因も分かった事だし、夕方までは様子見でも良いのでは?」
「それで戻ンねぇようなら、アフロディーテを叩き起こして解毒剤を作らせるか、何をやっても起きねぇようなら、最後の手段でムウに頼むか、だな。」
「そうだなぁ……。」


何というか、教皇補佐のお二人より、デスマスク様とカミュ様の方が、ずっとシッカリしている気が……。
お二人とも、猫ちゃんを没収されてしまった事で、心ここに在らず状態になってしまっているし。
アイオロス様に至っては、視線が私の腕に釘付け、つまりは、アイオリア様に一直線だし。
本当に、このお二人が聖域のトップで大丈夫なのでしょうか?
激しく心配になってきます。


「しかし、あのムウが引き受けてくれるだろうか?」
「引き受けさせるしかねぇだろ。このままじゃ黄金二人分の仕事量が俺達に割り振られンだぞ。脅そうが、頭下げようが、何やってもやらせンだよ。」
「お前が頭を下げるのか、デスマスク?」
「俺が下げてどうすンだよ。下げるならアイオロスだろ。ついでにサガも。」
「わ、私は『ついで』か?」


もう何度目ですか、この不毛な遣り取りは。
この部分を大幅カットして、もっとサクサク話を進めていただきたいものです。


「幸い、猫化の原因である紅茶は残っている。捨てたりはしてないのだろう、アンヌ?」
「はい、カミュ様。冷蔵庫の中のティーポットに残っています。それに、まだ茶葉も沢山あります。」
「それを使えば、ムウでも薔薇毒の分析は可能だろう、問題ない。」
「んじゃ、夕方までは様子見って事でイイな。戻ンねぇようだったら、また連絡する。」
「あ、あぁ……。」
「頼んだぞ。デスマスク、アンヌ。」


邪魔者払いをするように二人の背中を押して、部屋から追い出そうとするデスマスク様。
一方、名残惜しげに、顔だけこちらを向けて、いつまでも猫ちゃん達から視線を離せないでいるサガ様とアイオロス様。
結局は、そのまま押し出され、無情にもドアがバタンと閉められてしまった。


「……で、なンでオマエは戻ンねぇんだ、カミュ?」
「私は任務開けで休みなのだ。」
「あ、そー。」


私が猫ちゃん達を床へと放すと、早速とばかりに手にした猫じゃらしのオモチャをパタパタさせて、気を引こうとするカミュ様。
どうやら夕方まで居座る気満々らしい。
そんなカミュ様を見遣って溜息を吐いた後、デスマスク様はコーヒーを淹れにキッチンへと姿を消した。


「ミャ、ミャ。」
「シュラは動くものに興味があるのだな。そうらそうら。」
「ミャッ。」


パタパタとけしかけられる猫じゃらしに、夢中でじゃれ付くシュラ様を、カミュ様は目を細めて眺めている。
本当に動くものが好きですよね、シュラ様。
私のお尻に飛び付いてきたのも、多分、そのせいだ。


「今朝なんて、虫を捕まえてきたのですよ。」
「む、虫だと?」
「はい。しかも、それを食べたんですから、本っっ当に最低です。」
「虫を……、食べた?」
「アイオリア様なんて、私の目の前でムシャムシャと。あぁ、思い出しただけで悪寒がするっ。」


――ガタンッ!


猫じゃらしを手に持ったまま、突然、立ち上がったカミュ様。
一体、何事かと見上げる私に、視線を向けもせず、心なしか顔色が青いような?


「すまん、アンヌ。私は自宮に戻る。」
「え、カミュ様?」
「邪魔をしたな。」


そう言って、あっという間に部屋を出ていったカミュ様は、猫じゃらしを持ったまま行ってしまわれた。
残された私と二匹の猫ちゃんは、小首を傾げて、暫く呆然とドアを眺めていた。





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