それから何やかやと色々とあって、今はシュラ様もアイオリア様も、私の腕にシッカリと抱っこされていた。
向かい側に座るサガ様とアイオロス様は、明らかにズーンと沈んでいる雰囲気。
それに対して、デスマスク様はフンと鼻を鳴らし、カミュ様は呆れの溜息を吐いている。
つまり、色々あっての『色々』とは、可愛い猫ちゃん達にかまけて、サッパリ話が進まない教皇補佐のお二人の様子に、元々短い堪忍袋の緒が切れてしまったデスマスク様がブチ切れて、猫ちゃん達を没収した挙句に、先輩お二人に向かってグチグチと説教を垂れた。
要約すると、大体このような感じだ。


そういった訳で、デスマスク様は御機嫌が悪く、カミュ様はクールを越えて、視線で人を凍らせる域に達しようとしていた。
聖闘士ヒエラルキーに早くも崩壊の危機が……。


「……ったく。ホント、アンタ達に任せて、この聖域が大丈夫なのかって、心配になるわ。いっそ俺が教皇になった方がマシじゃねぇか?」
「デスマスクが教皇……。」
「それはつまり、綺麗な女官を集めて、教皇ハーレムを作りたいって事か?」
「違うわっ! そりゃサガだろ!」
「わ、私はハーレムなど作ってはおらんっ!」
「あ? やってたろ、前に。綺麗な姉チャン侍らせて、ウハウハしてたじゃねぇか。」
「そ、それは、私ではなく、もう一人のだな……。」


デスマスク様が教皇……、考えるだけで恐ろしい。
もし、そのような事になったら、私はシュラ様と二人で、ピレネーの山奥に籠もるしかないでしょうね。
身体の弱い私が、大自然の山暮らしに耐えられるかどうかは怪しいけれど、そこはまぁ、愛があれば何とか……。


「ミャン!」
「わ? 何ですか、シュラ様?」
「ミャ、ミャミャ、ミャミャミャン!」
「デスマスクに教皇の座を渡すくらいならば、俺が聖域を統べる、と言ってるな。」
「アイオロス様、猫語がお分かりに?」
「いや、何となく。」


何となく、って……。
流石はアイオロス様、とっても見事なアバウトさ。
しかも、多分、それが間違っていないだろうところが凄いです。


「だったら、アイオリア様が一番適任なんじゃないですか? 実力は勿論、正義感が強くて、真っ直ぐで、分け隔てなく、そして、お優しい方ですから。」
「ミィッ?」
「アンヌ……。確かに、貴女の言っている事は間違っていない。だが、大事な事を忘れているのだ。」
「単純、短気で単細胞。兎に角、頭使って考えンのが苦手だからなぁ。コイツが教皇になったら、何でも『えぇい、面倒!』で片付けようとすンじゃねぇか。」
「うん、そうだな。実の弟ながら、弁解の余地もない。俺も、そう思う。」
「ミ、ミィィィ……。」


可哀想に、アイオリア様は何も悪くないというのに、言われたい放題に言われて落ち込み、腕の中で項垂れている。
あまりの言われっ振りなのは、やはり彼が弟体質だからなのか。
それにしても皆様、本人(猫姿だけど)の前で、良くもこれだけ好き勝手が言えるものです。
せめて私だけでも彼の味方に。
そう思って、哀愁漂う丸まった背中を慰めるように撫でていたら、もう片方の腕に抱いていたシュラ様がググッと長い前足を伸ばし、アイオリア様の小さな頭を励ましの意を籠めてポンッと叩いた。





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