「ミ、ミィッ。」
「ん? どうした、アイオリア?」


それまで、しっかりとカミュ様に抱っこされて、しがみ付いていたアイオリア様だったが、突然、その腕の中でジタバタと暴れ始めた。
どうやら下に降ろして欲しいらしい。
それを察したカミュ様も、腕を緩めて、膝の上に彼を降ろして上げた。
すると、待ってましたとばかりに弾みを付けて、カミュ様の膝からジャンプ。
アイオリア様は、アイオロス様の膝の上へ、ピョーンと飛び移ったではないか。


「んっ、リア? お前、自ら兄ちゃんのところに来てくれたのか?」
「ミィッ。」


――ペロペロペロ。


広いアイオロス様の膝に、ちょこんと乗った猫ちゃんは、暫くジッとアイオロス様の顔を見上げた後。
先程、シュラ様に噛まれた指をペロペロと舐め出した。
傷が痛くならないように、そんな気持ちでもあるのだろうか。
一生懸命に舐め続ける姿が健気で、そして、破壊的に可愛らしい。
呆然と、その様子を見下ろしていたアイオロス様も、徐々に表情がパアアッと明るくなってくる。


「そうか、そうか。やっぱりリアは兄ちゃんが好きなんだな。可愛い、可愛い。」


――ワシワシワシワシ……。


「あ、あの、アイオロス様。そんなに強く撫でたら、摩擦熱でアイオリア様の頭が大変な事に……。」
「ミ、ミィィ……。」
「アイオロス! また言った傍から、そのような事を! お前の可愛がり方は、やり過ぎだと注意したばかりではないか!」


サガ様に頭を思い切り引っ叩かれて、やっとアイオロス様が手を止めると、膝の上にはグテンと伸びてしまったアイオリア様の姿。
全く、このお方は……、学習能力というものがないのでしょうか?
いや、寧ろ、能力はあるけれど、自分の都合の良いように、学習する事を拒否しているとしか思えない。
でも、例えサガ様に怒られようと、引っ叩かれようと、全力で可愛がりたくなる気持ちは分かります。
金茶色した猫姿のアイオリア様、可愛いですもの、本当に。


「アンヌ、すまない。アイオリアを頼む。」
「……え?」
「昨日のアレだ。アレをやってくれれば、アイオリアは元に戻る。」
「ミギャッ?!」


何の事やらサッパリな私に対して、シュラ様は直ぐに理解したらしい。
サガ様の膝の上、ピンと尻尾と耳を立て、元より鋭い目を更に尖らせ、その上、歯を剥き出しにして、飛び掛かろうと身構える。
が、そこは流石にサガ様。
シュラ様の怒りの気配に、いち早く反応した彼は、その小さな身体をガッチリと腕の中へと抱え込んでしまった。
こうなっては、猫姿のシュラ様に勝ち目はない。


「デスマスク。」
「へーへー。オラ、アンヌ。ギューッと抱き締めてやれ、ギューッと。オッパイに押し付けるようにな。」


ま、またもや、そんな事をさせる気ですか……。
それでアイオリア様が回復するのなら良いですけれど、シュラ様のあの怒り方ときたら。
四方八方に腕を振り回して、迂闊に近付いたら、スッパリと斬られてしまうかもしれない。
それも、サガ様に押え付けられていて、結局、ただバタバタもがいているだけのような状態になってはいるけれど。


「キシャー! ギギャー!」
「物凄い怒り様なのだな。普段のシュラは、こんなにも短気ではなかったように思うのだが。」
「あの無表情のお陰で知られてねぇが、実は嫉妬深ぇからな、コイツ。独占欲も人一倍強ぇしよ。しかも、猫になったせいか、怒りの沸点も低くなってるようだぜ。」


シュラ様の怒りの鳴き声をBGMに、カミュ様とデスマスク様の会話を聞きながら、腕の中にアイオリア様をギュッと抱き締める。
すると、徐々にではあるが、グッタリ伸びていた猫ちゃんが、回復して元気になっていくように思えた。





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