petit four的予想外の贈り物



「ディーテって、意外にシンプルよね?」


どんよりと曇った初冬の夕方。
吹き抜ける風の冷たさにウンザリしながら、夕方からの食事会のために外出の用意をしていた時に、双魚宮を訪ねてきたのは飛鳥だった。
彼女が現れると、ふわりと空気が緩む。
笑顔は暖かくて、雰囲気は穏やかで。
灰色だった冬の景色を、一瞬で暖かなカラーへと変えてみせた。
お裾分けだといって持ってきたバスケットの中のスイートポテトパイも、実に美味しそうだ。


「シンプル? 私が?」
「そうよ。だって、いつもモノトーンのお洋服ばかり着ているわ。」


言われて、今日の自分の装いを見返す。
白のシャツに黒のカシミアセーター、それにダークグレーのパンツ姿。
確かにシンプル、モノトーンだ。
しかも、冒頭の飛鳥の言葉は、黒い薄手のウールコートを羽織ったところで、投げ掛けられたものだった。


「本当だ。言い訳は出来ないね。」
「でしょう? ディーテは普段から白いシャツにブラックジーンズとか、外出する時だって、黒いジャケットを羽織ったりとか、白と黒ばかりよ。」
「でもねぇ……。」


私は『元』が派手だから、余り服装まで華美になるとね。
悪目立ちが過ぎて、白い目で見られる事になりかねない。
バランス的には、この程度の地味さが丁度良いと思っているのさ。
シュラくらい地味だと、多少は派手な方が見栄えが良いけれどね。


「でも、デスさんは元も派手だし、服装も派手よ。真っ赤なシャツに白いスーツでも、違和感なく似合いそう。」
「それが普通に似合うところがアイツの恐ろしいところだよ。兎に角、あの派手ケバ蟹と一緒にしないで欲しいね。」
「だけど……。」


それでも納得しないのか、飛鳥は僅かに口籠もった後。
シュルリと自分の首に巻いていたストールを外すと、彼女の予期せぬ行動に固まっていた私の首に、それをパパッと巻いてみせた。


「多少の差し色はあった方が良いと思うの。ほら!」
「あ、あぁ……。」


飛鳥に背を押されて、鏡の方へと振り返る。
肩に垂れる水色の髪の上からグルリと巻かれた目の醒める鮮やかな青いストールは、確かに黒とグレーだけだった私の地味な装いに、シッカリとしたアクセントを与えていた。


「ね、似合ってるでしょ?」
「確かに。反論は出来ないな。」
「それ、ディーテにプレゼントするわ。使って。」


聞けば、先日、日本に帰国した際に、衝動買いしたストールらしい。
きっとディーテに渡すために欲しくなったのね、なんて笑いながら話していたけれど。
これがシュラに買ってもらったものならば、決して手放さなかったのだろう。
そう思うと、悔しい気持ちも多少は湧き上がったが、これはこれで素直に嬉しいものだ。


好きな女の子からの思わぬプレゼント。
クリスマスには、いつも以上に奮発した贈り物を用意しないといけないかな。
シュラが用意するよりも、もっと素敵なプレゼントをね、



心も色付く暖かなマフラー



(でも、ちょっとだけ不満。色がさ……。)
(色? どうして?)
(これ、サガの髪色にソックリだ。)



‐end‐





お魚さまの服装は年中組の中で一番地味だと勝手に妄想w
蟹さまはアレなんで(アレって何だ?)派手で良いんです。
山羊さまは地味っ子なので、蟹さまチョイスの派手服も似合うし、地味服も似合う。
で、魚さまは見た目の麗しさがハンパないので、シンプル・イズ・ベストなんですよ、絶対w

2017.11.23



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