petit four的冬の始まり



ごそごそ。
ばさばさ。
わさわさ。


久し振りの休日。
だが、外は寒く、強い風と陰鬱な曇り空。
ガサガサと枯葉が大量に押し流されていく音を宮外に聞いては、外出する気も見事に失せて。
たまには外に出ない日があっても良いだろうと割り切り、今日は一日、ココから動かないと決めた。
読もう読もうと思いつつ、ずっと放置していた本を、今日こそは読破するのだ。
そう意気込んだは良いが……。


「……飛鳥。」
「なぁに?」
「何をしている、さっきから。」


リビングのソファーを俺の今日の居場所と決め、本と雑誌、温かくて甘いホットココアと、飛鳥の作ったビスケットを目の前のテーブルに並べて。
さぁ、読むぞとソファーへと沈んだところで、飛鳥が隣へとやってきたのだ。
そして、何やらゴソゴソバサバサと落ち着かない動きを繰り返されては、俺の気も散るというもの。


「俺は本に集中したいんだがな。」
「ごめんね。これで終わるから……。」


そう言って、バサリと大きめのブランケットを広げると、飛鳥は俺の腰と自分の腰を一度に覆うように、それを掛けた。
いや、掛けたというよりも、巻いたといった方が正しいか。


「あったか〜い。ぬくぬく。」
「……何をしたんだ?」
「まず背中のクッションにカイロを貼って、それから、これ。小さめ湯たんぽを膝の上に抱くでしょ。で、ブランケットでシュラと私を一緒に覆って、最後にシュラにピッタリと寄り添ってくっ付いちゃえば、寒いところなし。ぽかぽか、あったか。」


ブランケットの下、俺にギュギュッと抱き付いてくる飛鳥の身体は、確かに冷たかった。
下手をすると飛鳥の冷たさが俺に伝わって、抱き付かれている俺の身体まで冷えてしまいそうだが、カイロと湯たんぽの効果で、そこは何とか食い止められている。


「随分と冷えているな。」
「だって、キッチンが寒いんだもの。コンロも使って、オーブンにも火が入っているのに、全然暖かくならないのよ、あのキッチン。」


十二宮は兎に角も古い。
プライベートな居住空間は、ある程度、快適に暮らせるように改装はされているが、それでも元は何百年も使われ続けている石造りの建物だ。
歴史があるといえば聞こえは良いが、実際は老朽化が激しい旧時代の建築だ。
石の隙間のアチコチから隙間風が入り込むのは常の事。
特に、居住スペースの隅に作られているキッチンは、場所的にも寒さが激しいのだろう。


「キッチンに電気ヒーターでも入れるか。」
「ホント? 良いの?」
「お前が一日の多くを過ごす場所だ。寒いのは辛いだろう。」
「シュラ、有り難う! 嬉しい!」


パアアッと歓喜で顔をクシャクシャにした飛鳥が、俺の身体に回していた腕に更に力を籠め、ギュギュギュッと全力で締め上げてくる。
く、苦しいぞ、飛鳥。
少し腕の力を緩めろ。
そんなに締められたら、ココアをリバースしそうだ。


「聖闘士なのに耐えられないの?」
「聖闘士だろうと、締められたら苦しい。力は加減しろ。」
「でも、今日はこのままくっ付いていても良いでしょ? 折角だから……。」


どうやら、久し振りの休みに、久し振りの外出なしで、ゆっくりノンビリ俺とイチャイチャしたかったらしい。
抱き付いていた腕を解き、身体から俺の右手に変えて腕を絡ませると、飛鳥はそのままウットリと目を閉じて、俺の肩に頭を預けた。



寒い日に寄り添う暖かな体温



(スースー……。)
(いつの間にか寝てる。)
(スースー……。)
(ココアのお代わりが欲しいのだが、立ち上がったら怒るだろうな。)
(スピー、スピー……。)
(オイ、涎……。)



‐end‐





あまりに寒かったので、山羊さまとピッタリ密着してくっ付いていたい願望です。
あったかポカポカ山羊筋肉w

2017.11.19



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