petit four的夏の涼しい過ごし方



「暑いぃぃぃ……。」
「暑いな、本当に。」
「オイ、飛鳥。なンか冷てぇモン。かき氷でも持ってこい!」


磨羯宮のリビング。
余りの暑さに、シュラと二人、ソファーでグッタリと寝転ぶ昼下がり。
視界の端に写った飛鳥に向かって手を振り、かき氷の催促をすると、隣のソファーからダルそうにノソリと起き上がったシュラにゴツリと頭を殴られた。


「痛ぇ、何しやがる!」
「貴様こそ、飛鳥を何だと思っているのだ。彼女は俺の女であって、お前の召使いではない。」


なぁにが俺の女だ、変わり者カップルのクセしやがって。
元から湧いてるアタマが、暑さで更に沸騰してンじゃねぇのか。


「あぁ? テメェだって食いてぇンだろ、かき氷。俺にグチグチ言ってる暇があンなら、飛鳥にアタマの一つでも下げてこいよ。美味いかき氷作ってください、お願いしますってなぁ。」
「頭を下げて飛鳥の美味いかき氷が食えるなら、幾らでも下げよう。だが、貴様の分もとなると話は別だ。」
「ンだよ、器の小っせぇ、心の狭ぇ男だな。」
「楽して涼もうとする貴様に比べれば、俺の器など小さいとは言えん。」


ああ言えば、こう言う。
暑さにヤられてグッタリしてる割には、口だけは良く動きやがる。
ま、俺も人の事は言えねぇが。


「二人とも、無駄な言い合いばかりしてると、余計に暑くなってくるよ。はい、どうぞ。お待ちかねのかき氷。」
「おー、美味そー。」
「これは……、いつものかき氷とは違うな?」
「流石はシュラ。良く分かったね。これは台湾風かき氷なのです。」


言われて目の前に置かれた山盛りかき氷を眺めてみれば、透明な筈の氷が、これは白いミルク色だった。
その上に小さく角切りにされたマンゴーの他、何やら色々と乗せられている。


「氷を作る際に、練乳とミルクを混ぜ合わせてみたの。で、ふんわり削った氷を、ただ盛るだけじゃなくて、色々と手を加えてみようかと。丸いのがタピオカでしょ。それにクラッシュオレンジゼリーとココナッツを乗せて、マンゴーとオレンジをミックスした特製ソースと練乳を掛けて出来上がり。本当は、もっとカラフルな盛り付けにしたかったんだけど、それだと味の組み合わせが、ちょっとね。」
「ソコは拘る訳か。」
「当然ですよ、勿論ですよ〜。」


チラと横のシュラを見遣れば、黙々と無言でがっついている。
こりゃ、相当に美味いって事だな。
半分、呆れ気味に肩を竦め、自分もかき氷にスプーンを入れた。
シャクッと小さく響く音に耳が涼み、口に入れた途端に溶ける氷の冷たさに、舌も口ン中も身体も心地良く涼む。
あ〜、美味いわ。
シュラが無言で掻っ込むのも良く分かる。


「マンゴーとミルクの組み合わせが絶妙だな。そこに少しの酸味と、このタピオカの歯応えがクセになるというか……。」
「なかなか良いでしょ、タピオカ。本当はミルクティー用に買ったんだけどね。」
「あ? ミルクティーにタピオカ? なンでだ?」
「冷たいミルクティーに、黒蜜に漬けたタピオカを沈めて飲むの。前に日本のカフェで見掛けて、頼んだ事があって。食感が楽しかったから、真似てみようかと。」


それも美味そう、ってか、ソッチのが俺の好みっぽいな。
などと思いながら、既に半分以下に減ったかき氷をザクザクと掻き混ぜた。
この暑さに当てられて、早々に溶け始めたかき氷は、ミルクとマンゴーとタピオカとゼリーがトロトロに混ざり合い、これはこれで舌に喉に身体に心地良い冷たさを伝えてくる。
これで、目の前のウザい菓子馬鹿ップルがいなけりゃ最高なンだがな。
といって、かき氷に有り付けたのは、この馬鹿ップルのお陰だが。
茹だる暑さに、ささくれだってた気分も回復した事だし、ま、今日ぐらいはコイツ等に感謝しとくか。



甘いかき氷でクールダウン



(飛鳥、おかわりを頼む。)
(シュラ。食べ過ぎると、お腹壊しちゃうよ。)
(大丈夫だ。お前のスイーツならば、俺の腹は壊れん。)
(オマエ、どういう理屈だよ、そりゃ……。)



‐end‐





かき氷にも一手間で、大喜び山羊さま馬鹿食いするの図w
暑い日は、さらさらふわふわの美味しいかき氷が食べたいなぁと誰もが思いますよね。

2016.07.12



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