――バタンッ!


「デス様ー! 起きてください! もう朝です――、あっ!」


煙草に火を点けると、ほぼ同時。
まだ寝てるだろう俺を起こしに、アイリーンが寝室に入って来た。
こうして同棲を始めた今では、毎朝、恒例の事。
甲斐甲斐しくも、アイリーンは俺より早く起き、身支度を整え、せっせと朝食の準備をし、それから、漸く俺を起こしに来てくれるのだ。


それはそれは甘い朝のひと時――、の筈なンだが……。


「もう、デス様ったら! またベッドの上で煙草吸ってるんですか! 煙草の臭いが付くから、寝室での喫煙は止めてくださいって、言ったじゃないですか!」


ヤベ、見つかっちまったか……。
コイツ、大人しそうに見えて、実は口煩ぇンだよ。
今までは見つかンねぇように、アイリーンが起こしに来る前に、とっとと朝の一服を済ましてたンだが、今朝はちとノンビリし過ぎたか。


「あぁ、うっせーうっせー。朝の一服ぐらい、ゆっくりさせろっつーの。」
「朝の一服なら、ちゃんと着替えた後に、リビングで吸えば良いじゃないですか。あちらのお部屋には空気清浄機もありますもの、私だって怒らないですから。ほら、早く服を着てください。」


ったく、分かってねぇな、コイツ。
目覚めて直ぐの一服が、たまらなく美味いンだろが。
ベッドの上、裸で寝転んだまま、ゆっくりと燻らせて味わう一服がよ。


「へーへー、分かりましたよ。あ、俺、メシの前にシャワー浴びるわ。」
「はい、分かりました。バスタオルは浴室に置いてありま――、って、デス様?! どうして裸のまま歩いてるんですか! せめてシーツくらい腰に巻いてください!」


ベッドから降りて、浴室に向かおうとした俺。
勿論、起きたままの姿、パンツすら履いていない丸裸だ。
そンな俺を見て、アイリーンは真っ赤に顔を染めて、目を逸らす。


「別に関係ねぇだろ? 誰も見ちゃいねぇンだから。」
「わ、私が見てます!」
「何を今更。俺の裸なんざ、毎日、たっぷり見てんだろが。んな、恥ずかしがンなって。」
「み、見てるのは主にデス様だけであって、わ、私は……。」


照れてたじろぐアイリーンの姿が、妙に面白く俺の視界に映る。
ついつい、そのまま壁際に追い詰めて、迫ってみたりしたもんだ。


「や、ちょっと、デス様! 何しようとしているんですか?!」
「オマエが悪いンだろ。そンな美味そうな反応すっから……。」


こういう時に、過去の経験がモノを言うってな。
迫られた女が絶対に拒絶出来ねぇ、そンな熱い視線と、色気を滲ませた表情で、アイリーンをジッと見下ろす。


「や、止めて下さい〜っ!!」
「キスして欲しいンなら、そう言えよ。言わなきゃ、してやンねぇぞ。」


口では拒絶しながらも、その態度から、コイツの心も身体も期待で満ち溢れているのが一目で分かった。
なら、後は押して押して押し捲るだけ。
つー事で、フェロモン全開に、とどめの一言。
これで落ちねぇ女なんて、この世にいねぇ。


「……や、です。」
「あ? 何がヤだって?」
「キス……、してくれなきゃ嫌です……。」


てな訳で、俺の勝ち。
たっぷりと時間を掛けて焦らしながらアイリーンを見つめ、顎に指を掛ける。
フッと口元に笑みを浮かべると、後は全力で甘い唇を奪った。
絡み合うキスは、朝にしては濃厚過ぎる程に情熱的だ。





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