それは一目惚れと言っても良い。
私は彼を初めて見た時に、直ぐに心惹かれた。
この聖域に来た初日、黄金聖闘士の皆様に挨拶をした時の事。
私は皆様の顔と名前を何とか覚えようと、同じく日本から派遣されてきた女官達の後ろに隠れて、不躾な程に彼等の顔をジロジロと眺めていた。


何と言うか、皆が皆、美形過ぎて目が眩む……。
美しい人、格好良い人、凛々しい人。
兎に角、ゴージャスという一言に尽きる、その眩い姿形に目眩を覚えそうになった、その時。
不意に、彼と目が合った。


勿論、彼も美形である事に変わりはないのだけれど、他の方々に比べると幾分か地味と言うか。
クールで落ち着いた印象が、返って私の心を捉えたの。
目付きは鋭くて、怖い人のようにも見えるけれど、口数少なく、真面目に執務に取り組む姿が好印象だった。


「あれは山羊座のシュラ様よ。」
「シュラ、様……。」


気が付けば、彼ばかり見ていた。
寡黙だけれども、無愛想という訳でもなく。
必要な時には、必要な意見を述べる、その低い声が、また魅惑的で。
何と言うか、大人でストイックな雰囲気が、まさに私の好みにストライクだった。


でも、好きになった理由はそれだけじゃない。
シュラ様は、いつもさり気なく優しい。
ふとした時に手を貸してくれる、その何気なさ。


「ん……、届か、ない……。」
「ココか?」
「あ、シュラ様……。」


ファイルを棚に戻そうとして、でも手が届かなくて困っていた時に、スッと後ろから手を貸してくれたり。
重い荷物に四苦八苦していれば、何も言わずにそれを私の手から受け取って、目的の場所まで運んでいってくれたり。
一人ではどうしても出来ない事に困っていると、気付けば傍に来て、さり気なくフォローしてくれる。


「あの、有難う御座います、シュラ様。」
「礼など良い。気にするな。」


当然の事だと、何の御礼も求めずに立ち去っていくシュラ様。
そんな彼の優しさに触れる度に、私の心はドキンと高鳴り、日増しに鼓動が早くなっていく。
だけど、それをきっかけに会話が弾むでもなく、手を貸し終えたら直ぐに去ってしまうところを見ると、シュラ様は誰にでも同じように接し、同じように優しいのだろう。


気遣いを気遣いと感じさせない、さり気なさ。
それを鼻に掛けたりしない態度。
そのスマートな優しさと仕草に、気付けば私の気持ちは、彼への『好意』から『恋心』に変わっていった。





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