でも、流石に一年も片想いをしてると、色んな事を悶々と考えてしまう。
だって、あんなにさり気なく気遣いが出来るって事は、皆に対して優しいって事だろうし。
私だけが特別な訳じゃないから、優しくされる度に、期待するのは、きっと無駄なだけ。


でも、やっぱり好きなものは、好きなのよね。
今日だって、ほら……。


「鮎香、手を貸そうか? 一人じゃ大変だろう。」
「あ、シュラ様。すみません、お願いしても良いですか?」
「構わん。そのために来たのだからな。」


二人一組でローテーションを組んでいる、お昼のお茶当番。
今日は不運にも相方の女官の子が、急病でお休み。
私は給湯室の中で一人、全員分のお茶を用意するのに四苦八苦していた。


でも、そんな私の様子など他の誰も気が付かなくても、シュラ様だけはちゃんと見ていてくれた。
例え、その気遣いが皆に対して平等であると分かっていても、やっぱり凄く嬉しいもので。
それに、ほら。
こうして給湯室の中、二人きりで話せるなんて、それだけでも十分に幸運だと思う。


「このトレーに乗った分は、もう運んで良いのか?」
「はい。ミロ様とアイオリア様、カミュ様、それに、デスマスク様とアフロディーテ様の分です。どれがどなたのものだか分かりますか?」
「大丈夫だ、カップで分かる。」
「では、お願いします。」


トレーを手にしたシュラ様が、スッと背を向ける。
黄金聖闘士である彼に、お茶の準備の手伝いをさせてしまっている事を申し訳ないと思いつつも、私は他の方のお茶の用意があるため、ココに残らなければならない。
だけど、新しい茶葉を手に、ティーポットを引き寄せた刹那、背後からカタンと音がして。
ハッとして振り返った私の目に映ったのは、小さく首を傾げたシュラ様だった。


「……鮎香。」
「はい、どうかしましたか、シュラ様?」
「ちょっと止まってくれ。」


何かを見つけたのだろうか?
手にしていたトレーを置き、私に手を伸ばすシュラ様。
ドキッと高く跳ね上がった私の心音を余所に、その手は髪を滑り、そして、何かを掴んだ後、その手をゆっくりと目の前に翳した。


「髪に羽根がついていた。」
「羽根? 一体、何処で……。あ、枕でしょうか?」
「??」
「使っている羽根枕から出てきたのかもしれないです。髪に絡まっていたというのなら。」
「枕か……。俺は一瞬、鮎香自身のものかと思った。」


それは、どういう意味?
言葉の意味がまるで分からず首を傾げていると、目の前のシュラ様が自嘲気味にフッと軽い笑みを零す。
俯き気味に、照れ臭そうに。
その笑顔があまりに素敵で、思わず目を奪われてしまった私は、今まで以上に胸の鼓動が高鳴っているのを強く感じていた。



胸の鼓動が早鐘を打つ
(それは恋してる証拠です)



‐end‐





5周年記念の山羊連載をはじめてみました^^
ゆっくりスローペースに、山羊さまとの王道恋愛夢を紡いでいけたらと思います。
今回は夢主さん視点になりましたが、山羊さま視点も織り交ぜて、全二十題、全力でコンプを目指します!

2012.03.26



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