再び、胸の奥がドキドキと高鳴る。
シュラ様の指の触れた跡が、線状に赤くなっているのではと思う程に、頬の一部分だけが妙に熱い。
チラッと横のシュラ様を見上げれば、相変わらず色気たっぷりの眼差しで、私を横目で流し見ている。
この視線が、彼の瞳自体が、既に反則だわ、反則。
こんなに無意識・無自覚で人の心を掻き乱すなんて、罪と言っても良いくらい。


「シュラ様は……、その、今想っていらっしゃる方より前に、好きになられた方とか、恋人になった方とか、どうしていらっしゃらなかったのですか?」
「ん、何故だ?」


紅茶のカップに伸ばし掛けていた手をピタリと止めて、シュラ様は私の方をジッと見た。
ピタリと目が合うと、落ち着き掛けていた心臓が、また激しく鳴り出す。
再び赤く染まる顔を誤魔化すために、私は慌てて言葉を紡いだ。


「その……。ほら、あの物凄いお部屋の状態から察するに、もう数年は女性の出入りはなかったのではないかと思いまして……。あの、すみません。勝手な邪推をしてしまって。」
「いや、構わん。その通りだからな。」


止まっていた動きを再開し、カップを手に取ったシュラ様は、残っていた紅茶を一気に飲み干した。
カップをテーブルの上に置いたカチャッという音が響き、ゆっくりと上半身をソファーの背もたれに戻した彼は、何処か遠い眼差しで向こうの壁を見つめて、おもむろに口を開く。


「女の出入りがないのも当たり前だ。もう六年も、その女の事だけを想っているのだから。」
「えっ?! ろ、六年っ?!」
「こう見えて俺は一途だったらしい。」


自虐的にフッと軽い笑いを零し、シュラ様は心持ち俯いてしまった。
伏せた黒く濃い睫が頬に影を作り、それが妙に色っぽくて、私は思わずその横顔に見惚れてしまう。


それにしても驚きだった。
シュラ様は六年も、その女性の事を心に想っていたなんて。
デスマスク様達の話を聞いて、最近、好きになった方なのだとばかり思っていたけど、そうじゃなかったんだ。
こんなに素敵な男性に、そんなにも想われているその女性が羨ましいと思う反面、疑問も湧き上がる。


「どうして、今までご自分の想いを伝えようとなさらなかったのです?」


シュラ様からの告白であれば、きっと断る女性なんていない。
この凄まじい魅力の持ち主からの告白を断れる人がいるなら、是非とも会ってみたいもの。
ならば、想いを伝える事に躊躇する必要などないと思えるのに、そうしなかった理由は何処にあるのだろうか?
私は瞼を伏せたままのシュラ様をジッと見上げ、その答えを待っていた。





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