「あのですね……。シュラ様って、とても面倒臭がりですよね。」
「あー、アレな。見た目によらず何とやらで、皆、見事に騙されてるが、ありゃ相当に酷ぇモンだ。」
「何せ『あの部屋』だからね。」
「はい、それでですね……。カーテンを開けるのが面倒だから昼間からライトを点けるとか、女性は面倒だからデートの誘いにも乗らないとか、そんな人がですよ。お昼休みにわざわざ自宮に戻ってきて食事をするのは、面倒の内には入らないのですか? どうにもシュラ様にとっての『面倒』の基準が良く分からなくて……。」


思いの丈を一気に吐き出してはみたものの、何だかコレでは自分がお仕えしている相手の不平・不満を言っているようにも聞こえる。
全てを言い終えてからそうと気付いて、言ってはいけない事を口走ってしまったかしらと、私は胸の奥で自己嫌悪に陥りそうになった。


「オイ、そりゃオマエ……。」
「うん、そうだね……。」


互いに視線を送り合い、言葉を濁したデスマスク様とアフロディーテ様。
何だろう?
何故か私の方に向かって、何か言いたげな視線をチラチラと送っているけれど。


「オマエ、それ本気で言ってンのか? マジで分かンねぇワケ?」
「はぁ……。お二人は、お分りになっているのですか?」
「それは、ねぇ……。普通なら、その『意味』くらいは気付くと思うけど。」
「仕方ねぇ、アフロディーテ。コイツは世界一ニブい神経を持った女だ。そんじゃそこらのコトじゃ分からねぇんだよ。」


何気に物凄くけなされてませんか、私?
巨蟹宮にいた頃から「オマエはニブい!」とか良く言われてたけれど、正直、ただの不平・不満の言葉だろうと、いつもスルーしていた。
あぁ、またデスマスク様の愚痴なのだわ、と。
でも、こうも面と向かって言われると、流石の私でもカチンときてしまう。


「失礼ですね。私、そんなに鈍くはないですよ。」
「いや、ニブいし。」
「いや、鈍いよ、キミは。」


そんな口を揃えて言わなくたって……。
酷く落ち込みました、そうですか、私ってそんなに鈍いんですか。
折角、持ち直した心が、またジワジワと下降していくのが自分でも良く分かる。


「面倒か面倒じゃないかの基準くらい、そのうち嫌でも分かるようになる。あまり気にすンな。」
「そうだね。まぁ、そのうち時が来れば分かるだろうね。あ、でも一つだけ。多分、キミ自身に関係してる事なら、シュラにとっては何でも面倒にはならないと思うよ。」
「私自身……。やっぱり良く分かりません。」


私の言葉に、デスマスク様は「あー!」と奇声を発した後、苛々と髪を掻き毟り、アフロディーテ様はクスクスと楽しげに笑った。
あれ?
これって、先程のお二人と全く同じ。
シュラ様の『好きな人』の話をしていた時と……。


暇を告げて、巨蟹宮を去る。
何だか腑に落ちない事だらけで、頭の中がスッキリしないばかりか、余計に混乱してしまった状態の私は、一人、悶々と色んな事を考えながら、黙々と十二宮の長い階段を上がっていった。





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