でも、デスマスク様にしてみれば、良い迷惑だろう。
折角、やっと恋人さんを迎えに行こうと決心した矢先、神話クラスの化物と対峙する任務に同行だなんて。
しかも、十中八九、戦闘になるだろう。
ここ最近の中では、特に危険度の高い任務になる。


「確かに渋々だったがな。アフロディーテが断った時点で、アイツが引き受けるしかないから、仕方なくといったところだ。やはり補助は共に戦い慣れた相手が良い。任務の重大さを思えば、断れるものでもないだろう。」
「でも、その言い方ですと、アフロディーテ様は拒否されたのでしょう?」
「ロクに理由も言わず、自分は行かないとバッサリだ。随分と不機嫌な様子だったが、何なんだ、アレは?」


それは多分、シュラ様への嫉妬です、恋愛方面の。
シュラ様は上手くいったというのに、一方の自分はというと、なかなか思うように進んでくれない、その事への苛立ち。
それで、腹いせとばかりに、シュラ様に八つ当たりしているのだわ。
ハッキリ言ってしまえば、シュラ様のせいでも何でもないのだけれど、そんなアフロディーテ様の気持ちも分からないでもない。
今はシュラ様に協力する気が起きないのだろう。


「デスマスク様は、どうするつもりなのでしょう、恋人さんの事。」
「出立までには、あと五日ある。それまでに何とかすると言っていた。それで連れて戻って来るかどうかは、アイツ次第だ。」
「デスマスク様が見栄を張ったり、大きな事を言ったりしなければ、相手の方も素直に折れると思います。」
「あの臍曲がりの天の邪鬼にとっては難題だな。出来れば早く済ませて戻ってきて欲しいとは思うが。俺としては一日も早く出立したい。」


それでも五日間……。
たった五日しかない、出立までの時間。
何が起こるか分からないと思えば、大事に過ごさなければいけないシュラ様との時間だ。
そんなに急いで向かわなくとも、もっと先に延ばす事は出来なかったのだろうか?
いや、でも……。


「シュラ様、あの……。今回は調査だけで戻ってきたのなら、そのゴルゴンは、そのままそこに放置してきた事になりますよね? 放っておいても大丈夫なのですか?」
「復活したと言っても、まだ完璧にではない。だからこそ、ヤツは洞窟の奥から出る事が出来ないでいる。俺の見立てでは完全復活までは、長くて半年といったところだろう。」


つまり被害に遭ったのは、様子見や捜索などで、その洞窟に近付いた人達ばかり。
近隣の村々には、まだ被害は及んでいない状態。
時間的な猶予はあるが、それでも、このように焦って事を進めているのは、少しでも相手のゴルゴンの力が増大する前に叩いておきたいとの思いからだ。
過去の恨みからの怒りに満ちているゴルゴンが、自由に動けるようになれば、その被害の大きさは甚大なものになる。


「出来れば、サポートにはアフロディーテの方が良かったんだがな。アイツの使役する茨で洞窟の入口と内部を塞ぎ、毒薔薇の陣を敷けば、万が一、俺の攻撃によってゴルゴンが自由を得てしまったとしても、洞窟外へと脱出してしまう危険性は減る。しかし、こればかりは仕方ない。そういう状況に陥った時には、デスマスクに頑張ってもらおう。」
「神話クラスの化物に、冥界波は通じるのでしょうか?」
「さぁな。そればかりは、やってみない事には何とも言えん。」


一応、今は、中国地区を修行地としている白銀聖闘士が、その洞窟を見張っていてくれているとか。
予想に反してゴルゴンが出てきた場合には、五老峰の老師様が応戦しても良いと言ってくださっているそうだけど、シュラ様はそれを良しとしていない。
既に引退を決めている老師様のお手を煩わすような事はしたくないからこそ、彼は少しでも早く出立して、ゴルゴンを倒したいと思っているのだろう。





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