「ど、どう? 似合う、かな?」
「あ、あぁ……。良く……、その、似合っている。」


何だか、このお二人。
見ていて、とても可愛い。
二人揃って顔を赤く染めて、言葉も上手く紡げないまま、どうして良いのやら戸惑っている様子が、とても。
見方に寄れば、少年少女の青い恋のようにも受け取れるけれど、そうじゃなくて。
この二人は、抱えているもの、乗り越えていかなきゃならないもの、それが大きくて過酷で辛いものばかりだから、余計にこうして純粋な恋の形へと作り上げられてしまうのだろう、きっと。


「歩美さん、これも羽織ってみてください。」


差し出したのは、淡い水色の半袖ボレロ。
白いワンピースの上に羽織れば、また印象が変わる。
先程よりも、少しだけ清楚で上品な雰囲気に。


「あぁ、それも良いな。似合っている。」
「そ、そう? あ、ありがと……。」


二人共、かなり素直になってきた。
私は、そんな二人の様子が自分の事のように嬉しくて、口元に笑みが浮かぶのを止められなかった。


「はい、アイオリア様。このナイロンバッグの中に、買ってきたもの全て入っていますから。大丈夫ですか? 相当、重くて大きいですけれど。」
「平気だ、この程度。シュラだって、これを運んできたのだろう?」
「でも、アイオリア様は歩美さんを抱き上げていかなきゃならないですし、その上、この荷物じゃ……。」
「大丈夫だ。あれは……、物凄く軽いからな。」
「……え?」


軽いと、その一言を言った途端、アイオリア様の表情がスッと曇る。
つまりは、歩美さんの体重が軽い、その事を憂慮している証拠。


「もしかして、あまり食べていないのですか、歩美さん?」
「あぁ。食事の度に俺と喧嘩をして、上手く誤魔化しているようだが、食はかなり細くなっている。居住環境が変わったからな。最初は仕方ないのかと思っていたが、未だ改善されない。だが、俺の言う事には耳を貸さない彼女の事だ。しっかりと食べさせようと思っても、なかなか難しいのが現実だ。」


あのように強がってはいるけれど、やはり不安ばかりなのだ。
歩美さんにとって、この聖域に暮らす事は。
未知の世界、厳しいルール、何よりアイオリア様が禁忌を破って連れて来た事で、周囲に良く思われていない事実。
家族を失い心細い中、本当は心を閉ざしてしまってもおかしくはないのに。
強がって、精一杯に虚勢を張って、そのせいで素直になれないでいる彼女。
それがどれだけ苦しい事なのか、きっと私の想像を超える程だろう。


「歩美さんは不器用だから、きっと強がる事しか出来ないんです。でも、それを受け止めて上げられるのは、アイオリア様しかいないと思います。」
「分かっている。分かってはいるのだが……。」


俺も、どうしてか素直になれなくてな。
そう目を逸らして小さく呟いた後、アイオリア様は大きな溜息を吐いた。





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