私達が歩美さんのために買ってきたお洋服は数着あったが、その全てがワンピースだった。
足に大きな怪我を負っている彼女にとって、トップスとボトムスが別々だと、それだけで脱ぎ着が大変だろうと思っての事。
それに彼女は日本人、この国の既製服では体型的に合わないものも多い。
だけど、ふんわりとしたデザインの柔らかなワンピースなら、着る人を選ばないし、体型にも影響しない。


「このワンピース、凄く着心地が良いわ。脱ぎ着もし易いし、デザインも素敵で。」
「とってもお似合いです。あ、こっちはどうですか?」
「わ、可愛い! でも、私に似合うかな?」
「歩美さんに似合うと思うから選んだんです。さ、着てみてください。」


真っ白なコットンのワンピースは、シンプルなデザインの中に、さり気なくリボンやレースが使われていた。
ゆったりと爽やかな印象を与えるそれは、一枚で着るのは勿論、中に重ね着をしても良いだろうし、上にカーディガンを羽織っても可愛いだろう。
そして、何よりも、アイオリア様が好みそうな清潔感と女性らしさのあるワンピース。
彼女だけじゃなく、きっと彼も気に入る筈。
そう信じて選んだのだ。


「ど、どうかな? 似合ってる、私?」
「凄く素敵です。ほら、鏡を見てください。」


彼女に手を貸して、姿見の前へと誘(イザナ)った。
そこに映し出された姿に、歩美さんもまんざらでもない様子。
とても既製服とは思えない、彼女ために作られた服のようにピッタリなのだから。


「じゃあ、アイオリア様にも見せに行きましょう。」
「えっ?! い、嫌よ! どうせ関心ないわよ、あの人。私のファッションなんかには。」
「そんな事ないですって。この可愛らしい姿を見たら、きっとアイオリア様も喜びますよ。」
「で、でも……。」
「こういう時こそ、素直になるチャンスです。」


なかなか煮え切らない様子の歩美さんを引き摺るようにして、部屋を出た。
足の怪我のお陰で、ロクに抵抗出来ないのを良い事に、私は少々強引にリビングへと彼女を引き摺っていく。
途中、「あー。」とか「うー。」とか言いながら、軽い抵抗は示したものの、結局、最終的には観念したようで、リビングの入口に到達した頃には小さな溜息を吐き出していた。


「お待たせしました、アイオリア様。」
「ん? 随分と遅か――、っ?!」


アイオリア様の名前を呼ぶと同時に、彼女の背中を押し、前へと進ませた。
すると、丁度良く振り返ったアイオリア様の視界に、フワリと揺れるワンピースを纏った歩美さんの姿が映る。
それを狙っていた私は、まさに効果覿面に言葉と動きを止め、目を見開いて彼女を見つめるアイオリア様の様子を見て、心の中で「大成功!」と一人、手を叩いて喜んだ。





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