早朝トレーニングを終えて戻って来たシュラ様は、いつも通りに汗だくのトレーニングウェアをリビングの床に脱ぎ散らかし、バスルームへと直行した。
トングで汗に濡れた服を摘むために腰を屈めると、その都度、襲う腰痛に顔を顰める私。
寧ろ、腰痛になるのは男性であるシュラ様の方じゃないかと思うけれども、こうして平然とトレーニングに向かった姿を見るに、全くそんな事はないのだろう。


「うぅ、痛い……。あ、これ……。」


トングで摘んだ最後の一枚は、昨日、私が買って上げた『ノブナガパンツ』だった。
もしや、昨日からずっとこれを履きっ放し?
いや、確かあの時は、一度、履いて見せた後に、また袋に戻していたような。
そうだ、帰る時には、元々履いていた下着が乾いていたから、それを身に着けていたわ。
ベッド下に脱ぎ散らかされた衣服の中にも、その下着が混ざっていたもの。


という事は、シュラ様。
わざわざノブナガパンツを履いて、トレーニングに行かれたのですね。
でも、何故にノブナガパンツでトレーニングを……。


「……アンヌか? 起きても大丈夫なのか、身体は。」


洗濯機の中に、そのノブナガパンツを放り込んでいると、シャワーを浴びているシュラ様から声を掛けられた。
曇り硝子の向こう、相変わらずシルエットだけでも破壊的にセクシーだ。
その均整の取れた見事なスタイルの影形から、昨日のシュラ様の裸体を思い出してしまって、途端に顔が熱くなった。


「あ、はい。多少、腰は痛みますが平気です。あの、シュラ様は腰、痛くないのですか?」
「俺か? 痛みなど全くない。」


やっぱりですか、そうですか。
聖闘士って凄いのですね、あれだけハードに何度も致しておいて、何ともないなんて。
私の身体も少しは鍛えれば、シュラ様の激しさにも耐えられるようになるのだろうか?


「今日くらいは、ゆっくり休んでいても良かったんだぞ。昨日は少し無理をさせ過ぎてしまった。」
「そうは言っても、する事は山とありますもの、休んでもいられないのです。何せ昨日は休日でしたから。」


お掃除だって洗濯だってしなきゃいけないし、何よりもシュラ様のために美味しい食事を用意しなければ。
そりゃあ、昨日のランチに食べたようなスペイン料理とか、ホテルの高級ディナーに比べたら、私の作るものなんて大したものではないけれども。
それでも、家庭料理の一食、朝、昼、晩。
その全てに、シュラ様が美味しいと思うものを出して上げたい。
彼が美味しそうに食べる姿を見るのが、私の幸せでもあるのだから。


「無理をするな、アンヌ。辛い時は、辛いと言え。」
「はい、分かりました。」


もう遠慮をするような仲ではない。
間接的にそう言われているような気がして、それだけで彼の優しさを感じ取り、思わず頬が緩む。
取り敢えず腰は痛むが、酷く疲れている訳でも、眠い訳でもないから、今は大丈夫だとしても。
本当に辛い時は、シュラ様の優しさに甘えようと思った。





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