身に染み付いた長年の習慣というのは凄い。
あんなに疲れ果ててクタクタの態だったというのに、キッチリといつもと同じ時間に目が覚める不思議。
目覚めて慌てて手を伸ばした時計の針は、一分も違わずに普段と同じ起床時間を指していたのだから。


それにしても……。


身体を起こして、辺りをキョロキョロと見回す。
ココはどう見ても、シュラ様の部屋だ。
広い部屋に、大きなベッド、シンプルな家具。
腕には、これまたいつもと同じようにシュラ様の枕まで抱いている。


でも、昨夜は確かに自分の部屋で眠ってしまった筈。
夢……、ではないと思う。
あの後、シュラ様の部屋に向かった記憶など全くないのだもの。


チラと床に視線を落とすと、脱ぎ散らかされた服が視界に飛び込んだ。
それは、いつものようにシュラ様が脱ぎ捨てたもの。
だが、今朝はその横に、自分が昨日着ていた服までも放り出されていた。
きっと、いつまで待っても部屋に来ない私に痺れを切らして、シュラ様が様子を見に来たのだろう。
そこで服のまま眠りこけている私を発見し、この部屋に連れ帰って、いつものように腕に抱いて眠ったに違いないわ。
しかも、ご丁寧に服まで脱がして(脱がした服は相変わらず床に放置だけど)。


でも、運ばれた上に、服まで脱がされたっていうのに、全く目を覚まさなかったなんて。
私ったら、油断し過ぎだわ!


しかも、一歩間違えば、シュラ様に襲われていたかもしれないのに。
今は以前のように彼が自制する事もないだろうから、その可能性は高かっただろう。
素っ裸の相手を腕に抱いて寝てなどいたら、我慢なんて簡単に出来るものじゃない事くらい、私にでも分かる。


こうして本当の恋人同士人なれた後でも、変わらないシュラ様の優しさ。
その優しさが、痛む身体に沁みる。
甘えてばかりじゃいけない。
私も、その優しさに答えていかなければいけない。
これから恋人として、いや、彼の『妻』として傍に寄り添うのなら、私ばかりが与えられていてはいけないのだ。


左手の薬指に視線を落とす。
まだ真新しい輝きを放つ黄金色の指輪。
これが視界に入るだけで込み上げてくる喜び。
だが、喜んでばかりはいられない。
この指輪に相応しい女であるために、シュラ様の妻であるために、私も努力を怠らずに頑張らなきゃいけない。


私はタオルを巻いてベッドから下りると、床に散らかった二人分の服とシーツを抱えて部屋を出た。
洋服とシーツは洗濯機に、それから、自分の部屋でシャワーを浴びて、軽くメイクして。
いつものように朝食の準備をするためにキッチンに向かう。


「うっ……。腰、が……。」


腰だけじゃない、身体全部に鈍痛が走るが、そんな事で、めげてなどいられない。
あまり無駄な動きさえしなければ、今日一日くらいは何とかなるだろう。
それにしても、シュラ様は凄いわ。
彼だって相当に疲れていただろうに、いつもと変わらず朝早く起き出して、トレーニングに向かったのだから。
聖闘士の体力は、もしや本当に底なしなのかもしれないと、ちょっとだけ本気で思ってしまった。





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