〜第4章〜


1.事実婚



私達が磨羯宮に帰り着いたのは、日付の変わる直前だった。
もういっそ泊まってしまうのが良いだろうとシュラ様は仰っていたが、どうにも、任務以外で彼が自宮を空けてしまうのが気になって。
我が侭を言って、帰る事にしてもらったのだけれど……。


結局、疲れ果てていた私は、聖域に向かう間に、シュラ様の腕に抱かれたまま意識を飛ばしてしまったらしい。
リビングのソファーに身体を降ろされるまで、すっかり眠りこけていたようだった。


「着いたぞ、アンヌ。」
「え、あ……。ココ……。」
「俺の宮だ。」


答える間も、部屋の中をウロウロして、荷物を置いたり、水を飲んだりしているシュラ様。
その姿を虚ろな視界に捉えながら、ボンヤリと座っている私。


「すまんな。流石に疲れ果てただろう?」
「あ、はぁ……。」
「ほら、これはお前の分だ。コレを片付けて、着替えが終わったら、俺の部屋に来い。明日も、いつも通りに早いからな。もう寝てしまった方が良いだろう。」


そう言われて、私はノロノロと腰を上げた。
既に返事をする事すら億劫な程、疲れ果てていた。
自分の部屋に入り、手に持っていた今日の戦利品を机の上にドサリと投げ出す。


そのままベッドに倒れ伏してしまいたかったが、視界の端に映った、その戦利品に目が行くと、どうしても落ち着いてはいられなくなる。
これが女官の性分なのか、その一つ一つを手に取って片付け始める自分。
シュラ様が買ってくださった素敵なお洋服と、出来れば身に着けたくはない激しく際どい下着。
その下着をクローゼットの奥の奥、見えないところに仕舞い込んで、今度こそ、心おきなくベッドに飛び込んだ。


柔らかな寝具、染み付いた自分の香りに心が落ち着く。
あぁ、このまま眠ってしまえれば、どんなに心地良いか……。
でも、顔を洗って、シャワーを浴びて、服も着替えなきゃだし。
何より、シュラ様が彼のお部屋で待っている。


行かなきゃという思いはあれど、身体が全く動かない。
まるでベッドと一体化してしまったように、寝具の中に吸い込まれていく感覚。
瞼も重く、自分の意思では、もう開いてくれそうもない。


ごめんなさい、シュラ様。
私、今日は……、今日だけは、ココで寝させてもらいます。
だって、もう動けそうもないのですもの。
顔を洗っていなくても、服を着たままでも良い。
今日だけは、もうどうしようもないのだから、このままでも仕方ない……。


そう思ったのが最後。
私は深い深い眠りの世界に落ちていった。
それは夢さえも見ない、泥のような眠りだった。





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