朝食と後片付け、そして、洗濯物を干し終えると、私は慌てて出掛ける準備に取り掛かった。
先程から、シュラ様はリビングで雑誌を読みつつ、私の仕事が終わるのを待っている。
いつものようにビシッと身支度を整え、その長い足を組んで座る姿、ジッと真剣に雑誌に目を通す眼差し。
普段のボケボケさとだらしなさを全く感じさせない、所謂、『外向け』のスマートな格好良さに、思わず視線が釘付けになってしまうが、今は見惚れている場合ではない。
あまりお待たせして、ご機嫌斜めになったら大変だもの。


「お待たせしました、シュラ様。」
「…………。」
「何ですか、ジッと見て。」


今日は朝から、そんな視線で私の事を見てばかりいる。
今度は何だろう?
私の私服が見慣れないから、とか?
でも、外に買物に出る時には、いつも私服だし、今更、見慣れないというのもおかしい。


「相変わらず地味だなと、思ってな。」
「地味……、ですか?」


今日の天気はドンヨリとした曇り空。
暗く厚い雲に覆われた空は、いつ雨が降り出してもおかしくない空模様だ。
これが晴天だったなら、気温が下がり日差しの弱まる夕方までは出掛けられなかったのだから、この天気の悪さは好都合だったのだけれども。
それでも、今にも降り出しそうな曇り空では、気分も滅入ってくるもの。
せめて洋服だけでも爽やかにと、真っ白なコットンの柔らかいワンピースに、淡い水色の半袖ボレロを合わせてみた。
私にしては頑張った方だと思うのだけど、シュラ様に言わせれば、これでもまだまだ『地味』らしい。


「毎日、真っ白な女官服を着ているというのに、何故、休日まで白い服を着る? それでは何の代わり栄えもしないだろ。」
「でも、素材もデザインも全く違いますし……。」


何より、裾の長い女官服に比べたら、随分と足の露出が多い。
それだけでも十分に違いがある、派手さもある、ように思うけれど。


「折角、買物に出掛けるんだ。アンヌの服も少し買い揃えよう。お前は自覚ないようだが、パッと人目を惹く美人だからな。もっと色のある華やかな服だって似合う。」
「で、でも、この宮は緊縮財政なんですから、そんな余裕は、何処にも……。」
「支払いの事なら気にするな。俺の個人的な金には余裕がある。近頃、奴等と飲みに出掛けなくなったしな。他には……、そうだ。傘を買う約束だったか。ならば雑貨屋と、その後はランジェリーショップだ。」
「え、ランジェリーショップ?」


確か、頼まれていた買物の中に、下着は含まれていなかった筈。
流石に下着は自分に合うものを選びたいからと、歩美さんから言われていた。
ならば、どうしてランジェリーショップに行く必要などあるのだろう?
私はシュラ様の言葉に驚きで目を見開いたまま、軽く首を傾げた。





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