さっきは、あんなに強く抵抗したのに、今は全く抵抗出来ない。
その気が起きない。


このまま……。
このまま、シュラ様と……。
なんて気持ちが淡い期待となって、心の奥に首をもたげてくる。


今なら……。
今なら多分、きっと大丈夫。
そんな気がする。


この甘くて軽い心地良い痺れに全身を包まれた今なら、何一つ怖いとも思わずに彼を受け入れられそうな気がするの。
上手くいかない事なんて、きっとない。
それでシュラ様が私を嫌いになる事も、私が彼に抱かれる事に恐怖を覚えるようになる事もないわ。
このまま、この甘い痺れの中でなら……。


だけど、ボンヤリとした意識の中で、そんな事を思っていた私の意に反し、シュラ様は私の身体に上掛けを掛けると、それから直ぐに、傍を離れて何処かへ行ってしまった。
パタンと閉まったドアの音が、それを物語っている。


一体、何処へ行ってしまったのだろう?
夢の世界に落ちそうで、それでいてふわふわと現実の世界に留まっている私の意識では、上手く頭が回らずに、何かを深く考える事が出来なくて。
霞む視界に映る石造りの天井を眺めながら、ただ彼が戻ってくるのを待っていた。


「まだ、起きていたのか、アンヌ?」


暫くして、シュラ様が戻って来た。
目を見張る程に立派な体躯に、相変わらずバスタオル一枚だけしか纏っていない姿。
いつもなら、直ぐにも目を逸らしてしまう露出の多いその格好に、だが、今はベッドに横になったまま、そんな彼をぼんやりと見上げるだけ。


「そんなに眠たいのなら、先に寝てしまえば良かったものを。」


その言葉に返事をする気力もなく、力なく横たわっているだけの私。
逞しく隆起した肩や広い胸板からフワリと立ち昇る蒸気と、ほんのりと赤く染まった肌から、シャワーを浴びていたのだと分かり、自分だけズルいわなどと思ったのも束の間。
直ぐに視界が真っ暗な闇に覆われた。
シュラ様が電灯を消してしまったらしい。


「シュラ、様……?」
「もう寝るぞ。」


暗闇の中でガサリと音がする。
上掛けを捲った音だ。
それが証拠に、その中に潜り込んできた人の気配と、次いで、身体を引き寄せられて、強い力で抱き締められた。
直ぐ傍に聞こえる心音は、昨日の夜と同じ、一定のリズムを力強く刻んでいる。
そして、私の身体を包む、シュラ様の腕、身体。
お湯に火照った身体が、酷く熱く感じる……。


全身を捉えていた甘やかな軽い痺れが、徐々に徐々に、心地良い眠気に変わっていく。
気付けばスースーと彼の軽い寝息が聞こえてきて、それに釣られたのか、後を追うように私も深い眠りの世界へと引き込まれていた。





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