朝食の準備も後は卵を焼くだけとなり、私はダイニングテーブルにお皿やカップを並べながら、シュラ様の帰宅を待っていた。
時間的には、そろそろ戻ってきても良い頃なんだけど……。
そう思いながら、サラダをキッチンからダイニングへと運んでいた時、微かに物音が聞こえてきた気がして、私は慌てて小走りでリビングへと向かう。


だが、一歩遅かったか、そこには既にシュラ様の姿はなく、代わりに脱ぎ捨てられた衣服がリビングのフローリングの上に散乱していた。
それも、ドアの方へ向かって点々と、汗でぐっしょり濡れたままの衣服が、トレーニングウェアから下着まで。
そして、廊下の向こうから聞こえるのはシャワーの音。


……って事は、えぇっ?!
シュラ様ってば、素っ裸でココから浴室へと向かったの?!


よ、良かった!
そんなとんでもない場面に出くわさなくて!
鉢合わせしてたら、どうなっていた事か……。


ん……、でも、あれ?
これって、何処かであったような場面だけど、もしかしてデジャブ?


いや、違う違う!
この状況は、昨日の朝と丸っきり同じ。
つまり、昨日はこのタイミングで、私が磨羯宮を訪れたんだ。
という事は……。


――バタンッ!


勢い良く扉が開き、予想通りにシュラ様が現れた。
そう、昨日の朝と全く同じ姿――、バスタオル一枚を腰に捲いただけの格好で、黒く艶やかな髪からはポタポタと雫が垂れ落ちている。


「あぁ、アンヌ。おはよう。」
「おはよう、じゃないですよ、シュラ様! また、そのようにバスタオル一枚で!」
「あ……、あぁ、スマン。忘れていた。」


相変わらずボヤっとした様子で受け答えをした後、のんびりと背を向けてリビングを出て行こうとするシュラ様。
シャワーで濡れた髪を拭ってもいないのか、彼が動く度にボタボタと大きな雫が落ち、フローリングの床のアチコチに大きな染みを作っていく。
それを見ていられなくて、と言うか我慢出来なくて、シュラ様のバスタオル一枚なセクシースタイルから目を逸らしていた事も忘れ、私は彼を呼び止めていた。


「待って下さい、シュラ様!」
「ん?」
「もう! そんな状態では、いくら黄金聖闘士様だといっても風邪を引きますよ。ほら、ちゃんとタオルで拭いて……。」


シュラ様が肩に掛けていたフェイスタオルを奪って、彼の頭に手を伸ばす。
最初、私が何をしたいのか分からなかったのだろうシュラ様も、背の高い彼に向かって必死で手を伸ばして髪を拭こうとしている私の行動に気付き、スッと頭を下げて私の方へと向けてくれた。
ゴシゴシと濡れた髪をタオルで拭いていると、予想とは違って意外に髪が柔らかい事に気付く。
濡れている状態ではなく、乾いた髪に触ったら、とても気持ち良さそう……。
なんて、そんな事を思った、その時だった。





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