溜息と同時に肩を竦めたデスマスク様。
その顔は思いっきり歪んでいる。
これは、何かに向かって罵詈雑言を吐き出す際の彼の表情だ。
長年の付き合いだから分かる。
こういう顔をした直後は、聞くに堪えない文句や嫌味が百連発する、確実に。


「あー、ったくよ。なンで、この俺が、こンなに心配せにゃならん。クソが!」
「は……?」
「下らん痴話喧嘩に、俺を巻き込むなっつーの! なぁ、アンヌ?」
「は、はぁ……。」


いきなり声のトーンを上げて文句を吐き出し始めたかと思えば、意味不明に私の肩を抱き寄せてボスボスと叩いてくる。
勿論、力は加減して私に負担が掛からないようにしてくれてはいるが、叩く力が地味に強めで痛い。
困惑した私は、ただ黙って、デスマスク様のされるがままになっていたが、如実に表情に出てしまっていたのだろう。
ピタリと手を止めたデスマスク様は、不機嫌そうな表情で、ズイッと私の顔に自分の顔を近付けた。


「なンだ、その嫌そうな顔は?」
「そりゃあ、嫌に決まってます。地味に痛いですし。」


私は彼の手の離れた肩を労わるように撫でた。
見た感じ、ホンの少しだけ肌の表面が赤くなっているように思う。
こんなの、シュラ様に見られたら、きっと烈火の如く怒り出すだろう。
そして、容赦なくデスマスク様を攻撃し出すに違いない。
そう考えると、この場にシュラ様がいなくて良かったと思う。
まぁ、シュラ様がいたなら、何事も慎重派のデスマスク様が、気安く私に触れてくる事はないのだろうけれども。


「今から行くのか、獅子宮?」
「はい。歩美さんに頼まれていた品物もありますし、様子見も兼ねて……。」
「そうか……。ま、オマエなら丁度イイかもな。見事なまでにニブいし、ヤツ等の間に割って入るには、うってつけの人間だ。」
「割って入る?」


鈍いと言われた事には、この際、目を瞑るとして、『割って入る』とは、どういう意味だろう。
まさか、アイオリア様と歩美さんの間に、何か諍(イサカ)いでも起きているのかしら?
そう思うと、とても心配になってくる。


「ま、行ってみりゃ分かる。あれは俺じゃ手が付けられねぇから、オマエが何とかして来い。頼んだぞ。」
「何とかして来いと言われましても……。」
「だが、ヘタに深入りすンじゃねぇぞ。適度に仲裁に入って、後は適度に放置して来い。分かったな。」
「え? あの、仰る意味が分からないのですが、デスマスク様……。」
「だから、行きゃ分かるって。」


そう言って、もう一度、私の肩をボスボスと強めに叩くと、ちょっとだけ上機嫌になって、デスマスク様はニイッと笑った。





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