「待ってください! 今は、アイオリア様を責めている場合ではないでしょう? 早く対策を練らないと。」


責められ続けるアイオリア様を見ていられなくて、思わず口を挟んでしまった。
途端に振り返ったデスマスク様とシュラ様、二人の鋭い視線に全身が硬直する。
怖い、怖過ぎる!
そんな目に合った事ないけれど、きっとマフィアの人に拳銃を突き付けられるよりも、この二人の眼光の方が怖いと思う!


「チッ! しゃあねぇ。確かに、アンヌの言う通りだ。モタモタしてる場合じゃねぇし。」
「兎に角、報告の刻限までに、彼女を説得せねば……。」


ピリピリと張り詰めていた部屋の空気が、スッと緩んだ。
デスマスク様がアイオリア様の胸倉から手を離し、シュラ様は顎に手を当てて考え込む。
アイオリア様は、少しだけホッとした様子で、息を吐いた。


良かった。
何とか場の雰囲気を変える事が出来た。
正直、口を挟むのは物凄い勇気が必要だったのだけど、寿命を少し縮めても頑張った甲斐があったわ。


――バタンッ!


ホッとした、その一瞬の事だった。
勢い良く入口の扉が開き、驚いて振り返ると、そこから颯爽と入ってくる人の姿が見えた。


「アイオロス……。」


ポツリ、シュラ様の声が響く。
白い法衣の裾を翻し悠然と歩く姿は、威厳に満ちていて。
何もかもを見透かす青緑色の瞳が、その場にいた者を交互に見据えた。
いつもの、あの目映い笑顔は、その顔の何処にもみえない。


「悪いが、もう遅いよ。話は聞かせてもらった。」
「立ち聞きかよ。タチ悪ぃな。」
「何だ、デスマスク? 意見があるなら、聞くぞ。」
「いえ、なンにも。教皇補佐『殿』。」


ワザと嫌味ったらしく言い放ったデスマスク様の言葉にも、眉一つ動かさず、アイオロス様は涼しい顔で受け流した。
気付いてないという事はないだろうから、気にしない性格なのか。
それとも、時間が惜しいからか。


「アイオリア。お前は直ぐにも教皇宮へ向かい、任務完了の報告をしなさい。」
「し、しかし、兄さん……。」
「良いから、直ぐに行きなさい。そして、包み隠さず全てを教皇に報告するんだ、分かったな。」
「は、はい……。」


流石はアイオロス様だわ、アイオリア様に言い返す隙も与えない。
それどころか、静かに告げた言葉だけで、彼を従わせてしまった。


「彼女の説得は俺がする。その間、皆は部屋から出ていてくれ。」
「なンだと、アイオロス? そりゃ、どうしてだ?」
「それが一番ベストだからだ。彼女を拉致した張本人のリアじゃ、ただ単に喧嘩になるだけだろうし、何よりリアは短気だからね。根気強い説得には向かない。シュラは口下手だし、見た目で相手が怯えるだろう。デスマスクは口は達者だが、いまいち信用性に欠ける。だから、俺が一番良い。立場的にもな。」


短気だとか、見た目が怖いとか言われた三人は、一瞬、ムッとした表情になったが、アイオロス様の言う事は、確かに間違っていない。
そのせいか、誰も反論出来ずに、グッと押し黙った。





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