「実はアイオリアの事なんだが……。」
「アイオリア様の?」
「あ、そうか。」


話の続きを言い掛けて、でも、その言葉は私と目が合った途端に、一旦、止まってしまう。
先程までの曇り顔は綺麗に消え失せ、今は何処となく楽しそうに目を細めているアイオロス様。
こういう目まぐるしい表情の変化は、シュラ様やデスマスク様には見られないもの。
正直、どう応対して良いやら迷う。


「あの、アイオリア様がどうかされたのですか?」
「気になる?」
「え? それは、今、アイオロス様が……。」


自分から話を振っておいて、一体、何が言いたいの?
何がしたいの?


アイオロス様は、一見、感情をストレートに表情へ表しているようにも見えるけれど、返って彼が何を考えているのか、私には読めなかった。
シュラ様は無表情ゆえ何を考えているか分からないと言われがちだけど、絶対にシュラ様の方が分かり易い。
こう言っては怒られそうだけれど、ああ見えて単純なんだもの。
私にはアイオロス様の方が、数千倍は複雑怪奇に思えてならない。


「あれ? 確か、アイオリアはキミの事が好きなんだよね?」
「そ、それはっ! あの、その……。」
「良い反応だ。その様子じゃ、アイオリアには、もう告白されたんだね。」
「いえいえいえ! ま、まだです! まだ!」


ニッコリ笑って告げるアイオロス様の、これ以上なく楽しそうな様子に、思わず全力で否定してしまった。
それは、まさにドツボ。
彼の思い通りに、見事にはまってしまったと言って良い。


「何だ、まだなのか。アイオリアは随分と慎重派なんだな。つまらん。」
「つまるとか、つまらんとかではありません。私は――。」
「シュラの事が好き、って言いたいのかな?」
「っ?!」


やっぱり、この方の考えは全く読めない。
一体、何で?
どうして、そこでシュラ様の名前が出てくるの?


確かに、デスマスク様にもアフロディーテ様にも、私は鈍いし分かり易くて顔に出易いとは言われているけれど。
それは頻繁に出入りしているお二人だからこその言葉であって、それ程、顔を合わせる機会のないアイオロス様に、こうも簡単に見抜かれてしまうなんて驚き以外の何物でもない。


「はははっ。答えを言ってしまえば、アンヌじゃなくて、シュラの方だ。」
「……え?」
「この数日、気味悪いくらいに上機嫌だったからな。良い事でもあったのだろうと、そう推測したまでだ。と言っても、顔はいつもの仏頂面のままなんだが。」


やはり未来の教皇様は、ひと味もふた味も違う。
いや、それだけじゃない。
ピリッと辛い粒胡椒のようにスパイスが効いていて、私の心には少々刺激がキツ過ぎるように思えた。





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