寄り添って座ったシュラ様の左腕が、私の右腕にピッタリと触れている。
彼が僅かに身動(ミジロ)ぎする度に、擦れる肌が熱い。
触れ合う、その箇所にばかり意識が集中してしまって、自然と胸が高鳴り出す。


ドックン、ドックン……。


触れた部分から鼓動が伝わって、シュラ様にも聞こえてしまうのではないかと思う程に、全身が強く脈打っている。
デスマスク様に肩を抱かれていた時は、こんな胸の高鳴りは全くなかった。
なのに、横にいる相手がシュラ様に変わったというだけで、こんなにも緊張してしまう。


「ん? どうした、アンヌ? 顔が赤い。」
「や、あの、これは、その……。」
「また熱が上がってきたのか? 大丈夫か?」
「いえ、あの、そうではなくて……。」


するとシュラ様は急に眉を寄せ、顔を顰め、向かい側の椅子へと移動していたデスマスク様とアフロディーテ様をギロリと睨み付けた。
それはそれは、鋭い視線で。


「お前等、アンヌに酒を飲ませたのか?」
「飲ませてないけど。」
「本当か?」
「嘘じゃねぇって。酒は飲ませちゃいねぇが、ただ、ちょっとだけオモシロイ話はしたぜ。」
「面白い話、だと?」


シュラ様の視線が益々、鋭く尖っていく。
至近距離で見ていると、正直、凄く怖いです、シュラ様……。


「何を言った?」
「別に何も。ただ、シャワー中のオマエさんが、コイツをオカズに自己処理してるって事を、教えてやった程度だ。」
「ごほっ! ごほごほっ!」


それを言いますか、デスマスク様!
シュラ様の目の前で、それを言ってしまいますか、デスマスク様!!


「ち、余計な事を言いやがって。」
「おや、否定しないのかい?」
「仕方ない、事実だ。」


じ、事実なんですか?!
そうなんですか?!
それじゃあ、シュラ様の妄想内で、本当に私はあんな事こんな事をされていた、と……。


い、いやあぁぁぁ!!
本当にそんな……、妄想内とはいえ、シュラ様にそんな事をされちゃってたなんて!!


「あ、アンヌが益々、赤くなった。」
「本当に大丈夫か? やはり熱が……。」
「熱ではありません! 赤くなったのはシュラ様のせいですからっ!」


言ってしまってからハッとする。
しまった、これじゃあ逆効果じゃないの!


「俺のせい? 何か熱が上がるような事をしたか?」


何もしてはいないですけど、何かを言いましたから!
出来れば否定して欲しかった事を、思いっきり肯定されましたから!
そのせいです、そのせい!


「自己処理は仕方ないだろう。そうでもしなければ発散出来ん。大体、この三ヶ月、俺が必死にアピールしてきたというのに、それに全く気が付かない方が悪い。アンヌさえ、その気になってくれれば、自己処理なんてしなくて済むのだからな。」
「そんな! 私のせいだって言うんですか?!」
「勿論だ。俺がどれだけ我慢してきたか、良く分かってるだろう?」
「そ、それは、あの……。」


モゴモゴと口篭る私の肩を強く掴んで、強い視線で見下ろしてくるシュラ様。
目を逸らそうとすると、肩を掴む力がグッと強くなり、逸らす事を許してはくれない。
これは、何だか、ちょっとだけ危険な雰囲気では……?


「なぁ、デスマスク。私にはシュラの言葉が『お前を抱きたいのに抱かせてくれん、酷いヤツめ。』って言ってるように聞こえるんだけど、気のせいかな?」
「気のせいじゃねぇよ。ありゃ、そういう意味だ。」
「でも、あれだけハッキリ言ってるのに、まだ良く分かってないって、やっぱりアンヌは相当に鈍いね。」
「あぁ、呆れてモノも言えねぇわ。」


既に私の視界にはシュラ様しか映っておらず、耳にはシュラ様の声しか届いていない。
外野で呆れ果てた声を上げる彼等の言葉など、まるで聞こえていなかった。





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