兎に角、このままではいけない。
このままシュラ様のペースに飲まれてしまえば、何が起こるか分からないもの。
そう思って、肩を掴む腕を振り解こうとしたが、それはビクともせず、仕方なく彼の胸に手を当てて押し返し、その立派な身体を自分から離そうと試みた。


「そうは仰いますけど、シュラ様だって、私が鈍い事は良くご存知でしょう? 我慢されてるのは知ってましたが、まさかその相手が自分だなんて、今の今まで想像もしてなかったのですから、仕方ないじゃないですか。」
「また、そうやって口答えをするのか?」


あれ?
返って逆効果だった?
キリキリと吊り上っていくシュラ様の瞳。
ただでさえ鋭くて怖いというのに、そんな風にキツく睨まれたら身体が勝手に竦んで動かなくなる。
しかも、今はお酒のせいで充血し、ギラギラしているのだもの。


「く、口答えなど……。」
「しているだろう。それが口答えでなくて、何だと言うのだ?」
「それは……。」
「また俺に、その口を塞がれたいのか? そうして欲しくて、俺に盾突くのか?」
「や、違っ……、んんっ!」


いけない、と思った時には、もう遅くて。
強い腕で引き寄せられた身体は、身動きが取れないように羽交い絞めにされた。
そして、強引に唇を塞がれる。
目の前で、デスマスク様とアフロディーテ様が見ているというのに、そんな事、まるでお構いなしにジックリと押し付けられる唇。


シュラ様が興奮しているからなのか、それとも、お酒のせいなのか。
触れる唇が凄く熱い。
押し付けられたところが燃え上がりそうに熱を持って、角度を変えて擦り合わされる度に、その熱は温度を上げていく。
逃れようと暴れた瞬間に、唇が僅かに離れた隙をみて、大きく呼吸をしたのも束の間、また直ぐに熱い口付けに捉えられた。
刹那、フワリと香るアルコールの香りが、ゾクリとした震えを身体へと運ぶ。


「ヤベぇ、山羊の発情スイッチが入ったぞ。止めた方が良くねぇか?」
「止めてもイイけど……。後々、シュラの報復を受けるのは嫌だよね。」
「あぁ、確かにな……。」


そんな事言わずに、止めてください!
このままじゃ、シュラ様が、何処までも終わりなく暴走してしまうかもしれないんですから!


「てか、シュラさ。『告白するのは、まだ先だ。もっとアンヌの気が自分に向いてからじゃなきゃ駄目だ。』とか言ってなかったっけ?」
「あぁ、言ってたな。」
「だったら、これは何なんだい?」
「コイツ、アイオリアが戻ってきてから告白云々って話を聞いて、相当、動揺してたみてぇだからな。皿を取り落としたり、いつにもなくハイペースで酒煽ったり。」
「つまりは酔っ払い。」
「まぁ、酔いの反動で本音が抑えられなくなったってトコだろうなぁ。」


そんな事を冷静に分析してる暇があったら、シュラ様を引き剥がして!
呼吸困難で死んじゃう!
腕の力で圧死しちゃう!


と、その時、グラリと身体が傾く。
シュラ様の押し付けてくる力に耐え切れず、私の身体がソファーの上に沈んだ。
ボスンと柔らかい音と共に、揺れる黒い革張りのソファー。
そして、驚き固まる私を見下ろし、シュラ様は、まるでデスマスク様のような自信満々かつ最高にセクシャルな笑みを、その濡れた唇の端にニヤリと浮かべた。





- 3/11 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -