10.飲み会A



そうか……、私……、私、シュラ様の妄想内で、あんな事こんな事をされてたんですね。
シュラ様がシャワーを浴びている時には近寄らないようにしようとか、夜遅くにシュラ様の寝室には立ち入らないようにしようとか――、それはシュラ様の『自己処理現場』に出くわさないようにとの配慮で、色々と自分で規制をしてきたけれど、それで大正解だったんだわ。
じゃないと、自己処理どころか、実際に引き擦り込まれて、押し倒されていたかもしれないって事でしょう?
私は三ヶ月もの間、そんな危険と紙一重の生活を、何も知らずにしていたなんて!


「よく今まで手ぇ出されなかったよな、オマエ。アイツの忍耐強さにゃ、女神様も吃驚だわ。」
「それだけ彼女を大事にしてるって事だよ。じゃなきゃ、アンヌがココに移って来た時、直ぐにでも押し倒してたさ。そうしなかったのは、それだけ本気で、それだけ真剣に想っている証拠だろう。」
「そう、なので、しょうか……?」


私の視界を、アフロディーテ様の長い腕が遮り、デスマスク様の手に握られていたマイク代わりの黒山羊人形を奪い取った。
それを自らが持っていた白山羊人形と抱き合わせにして、私の手に握らせる。
私の腕の中、可愛らしいとぼけた顔をして抱き合う黒山羊さんと白山羊さんのぬいぐるみ。
これが……、シュラ様と私?


「これだけ一途に想われ続けてたっていうのに、全く気付く気配もなかったなんて、キミは酷い子だよ。」
「スミマセン……。」
「謝るなら、私にじゃなくて、シュラにだろう。ほら、丁度、戻って来た。」


アフロディーテ様に促されて顔を上げれば、ダイニングの方からシュラ様が氷とグラスを持って戻って来る姿が目に映る。
スッと伸びた背筋、歩く姿もスマートで素敵だわ。
なんて思ったのも一瞬。
先程までの会話を思い出し、途端に彼の姿を見ていられなくなる。


「噂をすれば何とやらだな。黒山羊チャンのご帰還だ。」
「ふふふ。シュラ、随分と遅かったね。」
「カミュから分けて貰った氷が、なかなか砕けなくてな。思った以上に時間が掛かった。」


そう言って、ゴトリと氷とグラスの乗ったトレーをテーブルに置いたシュラ様。
白く大きな手が、俯いていた私の視界にも映り、その長い指のしなやかな動きを見ただけで、不思議と全身が熱くなっていく。
あの指、あの手で、シュラ様は、そ、そんな事を……。


「それよりもお前達、何をしている?」
「何って、仲良くお喋りだよ、なぁ。」
「そうそう、大事な話をしていたのさ。」
「良いから、そこを退け。」


声だけで人を射抜けそうな程に冷たい声色で、私達の目の前に立ったシュラ様が、私の両サイドにいたデスマスク様とアフロディーテ様を力任せに引き剥がしに掛かる。
忌々しそうな顔をして、私の肩を抱いていたデスマスク様の腕を引っ張り、アフロディーテ様の身体を押し退けて。
そうして二人を蹴散らした後、私の隣へピッタリと寄り添って座ったシュラ様。
その振動に思わず顔を上げ、見上げた彼の横顔は、とても満足そうな顔をしていた。





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