静かな午前の部屋に、ガーガーゴーゴーと鳴り響く掃除機の音。
それに重なる非常に微妙な音程の鼻歌。
飛鳥本人は気持ち良く歌っている鼻歌だが、隣の部屋のデスからは、酷い騒音だと常に苦情が寄せられている。
それでもめげない彼女は、多分、自分が音痴だという事に気付いていないのだろう。


ダンダンダンッ!


煩い掃除機の音を裂いて、それ以上の音で以って叩かれる入口のドア。
スイッチを切った飛鳥がドアを開けると、朝からニコニコ笑顔のミロがそこに立っていた。
あれ、デジャブ?
昨夜もドアを開けたらミロが居て、朝にもまだココにミロが居る?
首を傾げた飛鳥に、ミロが慌てて昨夜の経緯を説明した。


「そっか、デスさんのところに泊まってたんだね。」
「そ。気付いたら、デスん家の床に転がってた。お陰で肩と首が痛くて痛くて。」
「それは自業自得じゃないの? 飲み過ぎ注意って事ね。」
「これを教訓に、少しお酒は控えるわ。」


飛鳥はクスクスと笑って、ミロに少し待つように言うと、自分はシュラの部屋の中へと戻っていった。
掃除機を片付け、お掃除道具を片付け、忘れ物がないか確認をしてからドアの外に出る。
外で待っていたミロと連れ立って階下へと下りたところで、自分の部屋から出てきたディーテとバッタリ出くわした。


「おや? 今、お帰りかな?」
「おはよう、ディーテ。良い朝ね。」
「そうだね。天気も良いし、ピクニックでもしたいくらいだね。」
「俺にとっては眩し過ぎるくらいだけど。この日光、頭にガンガンくるわ〜。」


キミは飲み過ぎだろう。
呆れ声で呟くと、ディーテはミロの肩をポンと軽く叩いた。
それにしても、シュラの彼女とデスの彼氏が一緒に帰宅していくとは、中々にシュールな光景だ。


「デスの彼氏じゃないし! 俺はソッチの趣味ないし!」
「でも、泊まったんだろう、デスの部屋に。」
「ただ泊めてもらっただけだから! 床に転がってただけだから!」


ムキになって反論するところを見ると、余計に怪しく思える。
ジトーッと猜疑の目で見遣るディーテと、あわあわ慌てて弁明するミロの遣り取りを眺め、飛鳥は再びクスクスと笑った。
シュラの友人達は皆、明るくて面白い人ばかりだ。
いつも見ているだけで楽しくなって、全く飽きない。


「さて、と。私は近所でランチでもしてから、帰ろっかな。」
「何処にランチに行くつもりだい?」
「紫龍くんのお店かな。炒飯と小籠包のセットが良いなぁ。ディーテも一緒に行く?」
「是非、御供させて欲しいね。朝ご飯を食べてないから、お腹が減っているんだ。」
「俺も! 俺も行く! 朝メシ食ったばかりだけど行く!」
「キミは二日酔いじゃなかったのか、ミロ?」
「ラーメンくらいなら食える、平気!」


だったら、三人で行こうか。
ニコニコと笑いながら、玄関のドアを指差す飛鳥。
うんうんと頷く男二人を引き連れ、屋外へと出た。
同じ商店街にある中華料理店『五老峰』は、シュラやデスも頻繁に利用している店で、ワンタン麺が美味しいと評判だ。
気分が小籠包にスッカリ傾いている飛鳥は、半スキップに(騒音だと言われている)鼻歌を口遊み、表通りへと向かって歩き出した。





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