婚期を逃してるっていえば、俺等の仲間内で結婚してるヤツって、まだ誰もいないんだよなぁ。
ミロはピスタチオをポリポリと食べながら思っていた。
仲間内か……、これもまた不思議な繋がりだ。


シュラとデスとディーテ、この三人は小学校からの腐れ縁だと聞いている。
しかも、中学からは進学校として有名な中高一貫の男子校。
その後、シュラとデスは難関私大のK大に進み、そこで後輩となったのがミロとリアとカミュだ。
そして、リアの兄だからと、ロスも頻繁に彼等の集まりに顔を出すようになり、そのロスの親友がサガだった。
ディーテのバーの近所、昔ながらの商店街に古書店を構えるサガは、ロスの紹介でこのバーの常連となり、彼等の仲間に加わった形となる。


ん?
という事は、繋がりの中心に居るのは、もしかしてリアか?


噛み砕いたピスタチオをゴクリと飲み込んで、ミロは真面目臭って眉を寄せたリアの顔を思い浮かべた。
決して話上手でもなければ、纏め上手でもない、照れ屋で口下手な男。
彼が皆を楽しくさせる訳でも、雰囲気を明るく変えてくれる訳でもないのに、不思議と周りには人が集まってくる。


「そういう性質なんかね、アイツ?」
「いきなり何の話だい?」
「リアさ、リア。生まれつきの主人公属性なのかなってさ。」
「確かに、あの子は主人公タイプだね。顔は良し、スポーツマン、長身マッチョでスタイルも良い。仲間に何かがあればグッと熱くなり、そして、女性とのロマンスには滅法鈍い。」


流石はサガ、分析は適格だ。
女性にはモテるのに、それに全く気付かない、それがまさにリア。
そして、人の良さ故か、頻繁に女に振り回されるのが基本だ。
営業先の病院でオバチャン看護師さん達にからかわれるのも、その延長のようなもの。


「意外とリアが一番最初に結婚したりしてね。」
「そりゃないだろー。まずは彼女持ちのシュラ。今頃は、上で飛鳥とニャンニャンして楽しんでるんだろうしさ。」


ミロが座っている場所の真上、天井を指差す。
その指の先で何が起こっているのか、行われているのか。
うっかり生々しい想像をしてしまったらしいサガが、ポッと赤く頬を染めた。
三十四歳にして女性関係の話となると、中学生のように初心なのだ。


「この調子じゃ、サガが一番遅い結婚になりそうだね。」
「こんなに色気がダダ漏れなのに、勿体ないな。見た目は女性慣れしてそうなのにさ。」
「女性慣れなどと……、ロスと一緒にしないでくれ。」
「ロスに女性の口説き方でもレクチャーして貰ったら、どうだい?」


そんなレクチャーなど絶対に受けないとでも言いたげに、サガはフンと鼻を鳴らして腕組みをした。
こんなに落ち着いた大人の男でありながら、弱点が女性の話題というのが何だか可笑しい。
合コンに参加すれば、黙って飲んでいるだけでも周りにワラワラと女性が群がってくるのがサガだ。
ただし、古書についてアレコレと熱弁を振るわないよう自分を抑えてもらう事が前提だが。
あの熱弁は、例え仲間であっても、聞いていてうんざりさせられる代物なのだから。


「そういやデスは? 部屋には居なかったみたいだけど。」
「今日は遅めの出勤だったからね。まだ仕事してるか、それとも、仕事はサクッと終わらせて、今頃は好みの女の子と一夜限りのアバンチュールでも楽しんでるかもよ。」
「全く、あの子は……。もう直ぐ三十歳になるというに、年甲斐もなく遊び歩いているなんて……。もう少し落ち着きを持たないと駄目だろう。」
「デスの夜遊びは爛れているからねー。」


サガに掛かれば三十路目前の男も『あの子』扱いになるのか。
女性に対しては百戦錬磨、サガのン十倍は女という生き物を熟知していても、それは『大人としての経験値』としては認められないらしい。
とはいえ、「逆にサガは夜遊びくらいした方が良いよ。こうして一人でチビチビ飲んでないでさ。」と、ミロにサクッと言われてしまい、顔を顰めるサガ。
爛れた夜遊びなど、真っ平ゴメンだ。
サガは再び鼻をフンと鳴らして、しっかりと腕を組み直した。





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