プチフール的寒い冬の早朝(山羊座)
2023/01/28 01:56


目が覚めたと同時に、肌を浚う寒気にブルリと身体が震えた。
ベッドの中に居ても、温かな寝具に包まれていても、凍てつく朝の寒さが隙間を縫って俺の身体を襲う。
ここから出たくない。
あまりの寒さに、そんな怠惰な感情が心の大半を占めていくが、そうは言っていられない。
日課の早朝トレーニングに行かなければ。
そう思えども、ゴソゴソと寝具の中に潜り込んでしまいたくなるのは、腕の中で丸まっている飛鳥から伝わる温もりを離し難かったからだ。


とはいえ、いつまでもこうしてゴロゴロしている訳にはいかない。
意を決して起こした身体は、だが、グイと強い力に引かれて、また元の柔らかなベッドマットの上へと逆戻りした。


「……飛鳥。」
「寒い……、シュラがいなくなったら、もっと寒くなる……。」
「ここから出る俺の方が寒い。ベッドの中に残れるなら、お前の方が暖かいだろうに。」
「こんな大きなベッドに一人で残されたら、ドンドン冷たくなっていくんだよ。ヒエヒエなんだよ。残される方も寒いんだよ……。」


半分、寝惚けた様子で、だが、俺の腕を掴む手にはしっかりと力が入っている。
何が何でも俺をベッドから出したくないのか……。


「ならば、早朝のトレーニングの代わりに、お前がもう一戦、相手をしてくれるのか?」
「……はい?」
「何を惚けている。昨夜、このベッドの上で行った激しい一戦を忘れた訳ではあるまい? アレならば、身体も温まる事は間違いないが……。」
「し、しません! もう一戦は、絶対にしません!」


あれだけガッチリと掴んでいた手を、簡単に緩める飛鳥。
更には、クルリと背中まで向けてしまう始末。
余程、俺ともう一戦、交えるのが嫌なのか。
まぁ、昨日はかなり激しかったから疲れているのは分かるのだが。


「オイ、飛鳥。」
「無理無理、絶対にしません。温まるっていうか熱くなり過ぎるし、汗も掻くし、汗がひいたら、余計に寒くなる……。」
「そうか、それは残念だ。」


飛鳥の腕という拘束から抜け出して、スルリとベッドから下りる。
もう彼女が引き留めてくる事はないが、これでトレーニングに行けると思えば、ホッと安堵もした。
やはり日課のトレーニングに行かないという選択はしたくない。
そこまで怠惰になれないのが俺の性分だ。
だが、少し寂しさも感じる。


「飛鳥……。」
「いやいや、無理無理。ホント無理。」


寝具の中に潜り込んだままの飛鳥は、今や俺の代わりに俺の枕を抱き締めている。
ブツブツと零れる言葉は、俺への文句か、それとも自分への戒めか。
衣服を身に着けながら眺める彼女の姿は、まるでクロワッサンのようで、無意識に笑みが浮かんだ。
そうだ。
少し前に、飛鳥の祖父母から送られてきた荷物の中に、『湯たんぽ』なるものがあったな。
まさに、こういう寒い日が使い時ではないのか。
あれがあれば、きっと彼女一人でも暖かく眠れるだろう。



眠る君に、暖かな夢を



(スピー、スピー……。)
(もう寝てる……。結局は、一人だろうが寒かろうが、眠れるんじゃないか……。)
(う〜ん……、シュラのエッチ……。)
(どんな夢を見ているんだ、飛鳥?)


***


寒波が押し寄せてきたので、ベッドから出たくない二人のお話などをw
ギリシャとはいえ聖域は標高の高い山奥にあるイメージなので、冬は寒いし雪も降るという、勝手なる妄想です(苦笑)


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