プチフール的相変わらずのバカップル(山羊座&蟹座)
2022/03/05 01:47


休みの日は、飛鳥とノンビリ過ごそうと決めていたのだが。
先日の任務の報告書を早く出せと急かされ、渋々、教皇宮へと赴いた。
直ぐに戻るつもりでいたが、何故かサガに捕まって、延々とアイオロスへの愚痴を聞かされ。
更には、その帰りに廊下でアイオロスに捕まって、延々とサガへの愚痴を聞かされ。
気付いたら、三時間もの貴重な時間を奪われてしまっていた。


うんざりしながら帰り着いた磨羯宮。
プライベートな部屋へと続く扉を開けると、途端に漂ってきたのは焼き菓子の甘い香り。
菓子の匂いは良い、心に積もった鬱屈が消え失せていくようだ。
香ばしさと、甘さと、果実の酸味、その三つが混じり合った魅惑的な香りに誘われ、足が自然とキッチンへと向かう。


「お、現れやがったな、甘党魔人。つまみ食いか、コラ。」
「つまみ食いじゃ済まないですよ。全部、食べ尽くしちゃうんですから、あの山羊さんは。」
「……俺を何だと思っているんだ、お前等は。」


キッチンに居たのは、飛鳥とデスマスク。
どうやら俺が教皇宮に行っている間に、二人でアップルパイを焼いていたらしい。
俺の留守に勝手に上がり込むとは、不届きな蟹め。
しかも、仲良く菓子作りとは。


「何って……、糖分過多の甘味ブラックホールだろ。」
「家内の甘いもの全部食べ尽くす山羊さんでしょ。」
「俺の胃は底なしではない。それに、山羊でもない。」


何度も言うが、俺は山羊ではない、山羊座の聖闘士だ。
そして、甘いものなら何でも食べると思われているが、俺にだって好みはある。
好きではない菓子もあるし、苦手な味もある。
飛鳥が作る菓子なら、何もかも全て美味いとは思うが。


「底なしだろ。甘いモンなら永久に食べ続けンだろ。ココにあるモンだって、あっという間にペロリだ。」
「フン。何でも食う訳ではない。蟹は食わんぞ。」
「……は?」
「……え?」
「それ以外は、まぁ、食うな。飛鳥の菓子は全部、飛鳥自身も含めて美味しくいただこう。」


そう言い放った瞬間、飛鳥は「ひえぇぇ!」と可愛さの欠けた悲鳴を上げ、デスマスクは思いっ切り渋い顔をした。
本当の事を言って、何が悪い。
俺は飛鳥の作る菓子が好きだが、それも飛鳥が居てこそだ。
飛鳥自身か、飛鳥の作る菓子か、どちらかを選べと言われたら、迷わず飛鳥を取る。
例え、飛鳥の菓子が食えなくなっても、飛鳥自身が居ればそれで良い。


「た、助けて……。食べられる……、甘党山羊さんに食べ尽くされる……。」
「こンのバカップル共が……。」
「俺は正直に言っただけだ。飛鳥の甘さは、そこらの菓子など比べものにもならん。何度でも味わいたくなるのは当然だ。」
「やーめーてー!」
「忘れてたわ。オマエは甘党魔人以前に、ムッツリスケベ山羊だったわ。脳内、甘いものとスケベな事だけで、いっぱいなンだろ、どうせ。」


失礼な。
ちゃんと執務や任務の事も考えているし、聖闘士候補生達の育成の事も考えている。
それに、地上の平和の事も。


「分かった、分かった、もうイイ。俺に向かって砂糖吐くな。バカップルはバカップルとして、俺の見えないトコでイチャついてくれ。」
「お前さえ居なければ、そのつもりだが?」
「飛鳥も、俺の後ろになンか隠れてねぇで、パキッとエロ山羊に食われてこい。」
「えええ? 酷い! 見捨てるんですか、デスさん?!」


バカップルに付ける薬はねぇンだよ。
そう言って、デスマスクはアップルパイを箱に入れると、さっさと宮を出て行った。
そうか、珍しく気を遣ってくれたのか。
ならば、その気遣いを無駄にする事はあるまい。
俺はニヤリと笑むと、こっそりキッチンを抜け出そうとしていた飛鳥を捕まえて、意気揚々と寝室へ向かったのだった。



バカップル病は一生治りません


***


山羊さまに「蟹は食わんぞ。」って言わせたかっただけで、こんな話になってしまいました(汗)
ウチの山羊さまは、一年三六五日、スケベ道に邁進しております(滝汗)


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