プチフール的酔っ払い達の朝(山羊座&蟹座)
2021/12/05 01:33


目が覚めると、飛鳥が俺の身体にシッカリとしがみ付いて寝ているのに気が付いた。
聖闘士として如何なる事態にも対応出来るよう眠りは浅い筈なのだが、抱き付かれた事にも気付かなかったとは、俺も相当に酔っていたという事か。
見事に爆睡していたらしい。


それにしても、飛鳥だ。
昨夜はあれだけ俺の事を「臭い、臭い!」と言い放ち、「臭い人は寄らないで。」とベッドの端と端に離れて眠ったというのに、結局、いつも通りにピッタリとくっ付いてくるのは、睡眠下の無意識なのか。
それとも、酔いが覚めると同時に、昨夜の記憶も失ったのか。
揺り起こして確かめてみたところ、どうやら昨夜の事は殆ど覚えていないようだった。
かなりの泥酔具合だったからな、仕方ない。


「……頭、痛い。」
「二日酔いだな。飲み過ぎだ。」
「そんなに飲んだかなぁ。ちょっとハイペースかなとは思ったけど。そういえば、シュラはいつ帰ってきたの? 全然、覚えていないんだけど……。」
「そこから覚えていないのか。ちょっとどころか、かなりのハイペースで飲んだのだろう。」
「う〜ん……。」


酔い覚ましのシャワーを浴び、ほっこり湯気を上げながら、飛鳥が首を傾げる。
俺が帰宅した時、かなりの数のワインの瓶とシードルの瓶が転がっていた。
デスマスクとアフロディーテはワインだ。
とすると、シードルの瓶は、飛鳥が空けた事になる。
あれだけ飲めば、そりゃあ泥酔もするだろう。
抱き付き魔になって、意味不明に「臭い。」と連呼もするだろう。
覚えていないのなら、まぁ良い。
あの不快な悪臭の話題が消えてなくなるのなら。


「……起きろ、デスマスク。」
「あ、うぁ……。」


飛鳥の他に、もう一人。
泥酔してソファーに横たわる蟹の死体。
もとい、巨蟹宮に戻れなくなって、我が家のソファーを占拠して寝ているデスマスク。
俺の背後からソファーの上を覗き込んだ飛鳥が、目を丸くして呟く。


「あ、蟹さんの死体。」
「蟹じゃねぇ。」
「おお、生きてる。」
「死ンでねぇし、酔って寝てただけだ。」
「酒臭いぞ、シャワー浴びてこい。」


飛鳥の暴言(俺は心の中で言ってはいるが口には出していない)に、飛び起きたデスマスク。
怒りを滲ませて俺達を睨み上げるが、二日酔いの威力は激しく、直ぐに頭を押さえて項垂れる。
俺達三人の中で、意外とコイツが一番アルコールに弱い。
一番強いのはアフロディーテだ。


「オイ。こりゃ何だ?」
「飛鳥お気に入りのブランケットだ。自分も泥酔してるのに、お前が風邪を引かぬようにと掛けてやったんだぞ。飛鳥に感謝しろ。」
「いや、感謝っつーか……。山羊柄って……。」
「可愛いでしょ、山羊さん。」
「ドコで見つけたンだよ、こんなモン。」


白山羊と黒山羊の山羊郵便の模様をしたブランケット。
本当に何処で見つけてきたのか俺も知らないが、飛鳥の身の回りには山羊柄の雑貨がジワジワと増えている。
マグカップだけでも三つ、他にも色々。
気が付けば、山羊だらけだ。
飛鳥には、俺は『山羊』ではなく『山羊座』だと言っているのだが、彼女にとっては、どちらも同じようなものらしい。
少しずつ増え続けている山羊のぬいぐるみも、今や六体にもなった。
流石に増え過ぎではないかと思う。


「で、俺がシャワーを浴びるのはイイとして、オマエは大丈夫なのか、シュラ?」
「俺?」
「だって、オマエ。臭いンだろ? 蒸れに蒸れ捲ったパンツのな……、グエッ!」
「それ以上、余計な事を言ったら、三枚に下ろすぞ、蟹。」
「ヤメロ! 死ぬ、マジで死ぬ!」


折角、飛鳥が綺麗さっぱり記憶を無くしているというのに、思い出させてなるものか。
掴んだ襟をギリギリと絞め上げ、三枚に下ろすより前に、落ちそうになる蟹。
ハラハラと俺達の様子を見守っている飛鳥の目の前で悪いが、一度、完全に失神させてやろう。
ヤツの記憶も消え失せるようにな!



二日酔いなら大人しくしていろ!



(ゲホッ! ゲホゲホッ!)
(どうだ? 全て忘れたか?)
(テメッ! 覚えてろよ!)
(何の話かな?)
(飛鳥は気にするな。)


***


前回の『臭い問題』の続きで、翌朝の話です。
私の中で蟹さまは、そんなにアルコールに強くないイメージ。
でも、お酒を飲むのは好き。
で、酔っ払って帰宅困難になり、頻繁に山羊さまの宮にお泊りしてれば良いと思ってますw


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