プチフール的臭い問題(年中組)
2021/11/18 01:37


聖闘士候補生達の夜間訓練に付き添い、真っ暗な聖域の森の中を駆け回って。
大量の汗を掻いたまま自宮に辿り着いたのは、二十三時を少し超えた頃だった。
飛鳥は起きているだろうか、寝ているだろうか。
入口を入って直ぐに黄金聖衣を外し、リビングへと向かう。


「おかえり、シュラ。随分と遅かったじゃないか。」
「邪魔してるぜ。つか、飲んでるぜ。」


そこに待っていたのは飛鳥ではなく、顔を見たところで嬉しくとも何ともない悪友二人の姿。
しかも、酔っ払い。
酔いが回っているのか顔を薄らと赤く染め、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべてコチラを見ている。
というか、飛鳥は何処へ行ったのだ?
と、思った刹那だった。


「わーい、シュラ! おかえり〜!」
「っ?! 飛鳥?!」


背後から抱き付かれた。
そう、飛鳥は酔っ払うと(俺限定の)抱き付き魔になる。
きっと、俺が帰ってきた小宇宙を感じ取った二人に唆されたのだろう。
ドアの陰で待ち伏せしていたのだ。


「……うっ。」
「どうした、飛鳥?」
「く、臭い……。シュラ、臭い……。」
「は?」


抱き付いていた腕をソロソロと放すと、飛鳥は俺から距離を取る。
しかも、しっかりと手で鼻を塞いで。
これまで、このような事はなかっただけに多少のショックを受けながらも、目を細めつつ溜息を吐く。


「仕方ない。候補生どもと一緒になって走り回ってきたからな、汗だくなんだ。」
「いや、汗の臭いじゃなくて、もっとこう……。」
「何だ?」
「ムレにムレ捲って時間が経ったパンツの中みたいな、モワッとした悪臭が……。」


飛鳥が、そう言い放った瞬間、悪友二人が爆笑する。
酒が入っているから余計に質が悪い。
ゲラゲラと遠慮なく笑うだけでなく、目尻に涙まで溜め、アフロディーテに至っては腹まで抱えて笑っている。


いや、それよりも!
俺から、そんな気持ちの悪い臭いが発散されているのか?!
本当か?!
強かに酔っ払っているせいで、飛鳥の鼻の方が麻痺してるんじゃないのか?!


しかし、飛鳥は俺から更に距離を取って、部屋の隅で背中を向けて蹲ってしまう始末。
そして、何やらブツブツと呟き始めたではないか。


「シュラが、こんなに臭いなんて……、シュラが……。」
「オーイ。早くシャワー、浴びてこいよ。飛鳥が泣いてンぞ。」
「私達のところまで不快な臭いが届く前に、早く消えてくれないかな。飛鳥も嫌がっている事だし。」
「クッ……。」


まるで汚物でも見るかのように嫌そうな視線を向けると、息ピッタリに「シッシッ、あっち行け!」と、俺に向かって手を払う仕草をする二人。
非常に腹立たしくはあったが、これ以上、飛鳥を悲しませる訳にもいくまい。
俺はガックリと肩を落としてバスルームへと向かった。
当然、念には念を入れて髪と身体を洗ったのは言うまでもない。
爽やかなオレンジの香りがする飛鳥お気に入りのシャワージェルも使ってやった。


「……へぇ。黄金聖衣って、そんなにムレるんだね。」
「まぁ、金属の鎧だからね、聖衣も。特に黄金聖衣は全身の殆どを覆っているし、ムレない方がおかしいよ。」
「だよなぁ。あのムレ、何とかなンねぇの? 脱いだ時、本っ当に不快だよな。」
「でも、私はシュラみたいに臭くはならないよ。いつでも最高級の薔薇の香りが身体を包んでいるからね。」
「俺も、多少の汗臭さはあっても、パンツの中みてぇな悪臭にはならねぇよなぁ。」


リビングに戻ると、そんな話を三人でノホホンとしていた。
沸々と怒りが込み上げてくるが、グッと我慢して飛鳥の横に腰を下ろす。
多少、心配であった飛鳥は、俺から逃げる事も、距離を取る事もなかった。
だがしかし、いつものように抱き付き魔になる事は、一晩中、なかったが……。



まさか臭いに悩む日が来るとは



(もう臭わないだろう?)
(鼻呼吸を止めてるから分かんない。)
(は?)
(だって、また臭ったら嫌だし。)
(ク、ハハハ!)
(アハハッ!)


***


色々と酷い話でゴメンナサイ;
黄金聖衣ってムレそうだなと思ったら、阿呆な妄想が止まらなくなりました。
山羊さま、ゴメンナサイ;


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