闇のリズム的にゃんぱにな新騒動43
2021/04/30 23:59


私と猫ちゃん達のところへと近寄ってきたムウ様が、黒猫姿のシュラ様を抱き上げた。
傍らに残った金茶色の猫ちゃんを膝の上に乗せ、頭から背中に掛けて撫でて上げると、アイオリア様の喉がゴロゴロと鳴った。
目尻を下げて猫ちゃん達を愛でる私達を、アフロディーテ様は冷めた目で見下ろしている。


「キミ達までニヤつくとは……。こんな可愛げのない猫のどこが良いのか、私には全く分からないよ。」
「可愛いじゃないですか。寧ろ、可愛く見えない貴方の感覚の方が不思議ですよ。ねぇ、アンヌ。」
「あ、はい……。シュラ様もアイオリア様も、とっても可愛いですよ。」
「中身がアレとアレな、ムッツリ猫なのにかい?」


先程と全く同じ台詞を持ち出し、冷めた視線から、更に氷点下の視線に変えて、ムウ様と私の腕の中に収まる猫ちゃん達を見遣るアフロディーテ様。
どうして、こんなにも猫ちゃん達を毛嫌いするのでしょう?
シュラ様とアイオリア様だから許せないのか、それとも、単なる猫ちゃん嫌いか……。
と、その時、ドスドスと聞き慣れた足音が扉の向こうから響いてきた。
この足音は間違いなくデスマスク様だ。


「おう、戻ったぞ。」
「キミはまた、ワザとらしい足音を立てて……。」
「あ? なンだ、アフロディーテ。来てたのかよ。」


そう、デスマスク様が、いかにも彼らしい足音を立てて歩いている時は、自分がココに居るんだというアピールだ。
ワザと足音を立てる事で自分の存在を相手に知らせ、警戒心を解くためのもの。
普段は足音を立てるどころか、気配さえ絶って歩く。
実際のところ、デスマスク様の、あの態度の殆どが、『それらしく』みせるための演出なのだ。


「私が居ては不都合なのか、蟹?」
「ンな事、言ってねぇよ。ムウしか居ねぇと思ってたから、吃驚しただけだ。」
「ミロの姿が見えませんが、どうしたのです?」
「あー、アイツ、自分の宮に帰ったわ。」


ココに戻ってくると、また猫ちゃん達に飛び付かれてゴロニャンされるところから始まる。
それが億劫だとか言い訳して、天蠍宮に戻っていったそうだ。


「つっても、きっと数時間内に、またココに来るんだろうぜ。なンだかンだ言って、猫にじゃれ付かれたいに決まってるからな。」
「ミロは今日、休みでしたか?」
「おう。」
「だったら、絶対に来るだろうね。こんな憎たらしいだけの猫共に飛び付かれて何が嬉しいのか、私にはサッパリ分からないけど。」


十二宮の住人で、猫化したシュラ様とアイオリア様の可愛さに夢中にならないのは、アフロディーテ様だけです。
不思議ですね、どうして、この可愛さに心奪われないのでしょうか?
例え、中身がシュラ様とアイオリア様だと分かっていても、いや、彼等だと分かっているからこそ、そのギャップ故に、余計に可愛さが優って見えるのに。


「では、私はそろそろ行きます。執務の状況も気になりますから。」
「もう行ってしまうのですか、ムウ様?」
「彼等の可愛さは十分、堪能させていただきました。後は、お二人にお任せしましょう。」
「お任せって言われてもなぁ……。」


ムウ様は腕に抱いていた黒猫ちゃんを、最後にワシャワシャと撫で回した後、デスマスク様の腕の中へと押し込み、サッと身を翻して去っていった。
後に残された私達、アフロディーテ様は呆れの溜息を吐き、デスマスク様は肩を大きく竦めて。
そして、猫ちゃん姿のアイオリア様は目をパチクリと瞬かせ、シュラ様はクワッと大きな欠伸を漏らした。


(つづく)


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