闇のリズム的にゃんぱにな新騒動39
2020/10/31 23:59

「シャー!」
「はいはい。そんなに歯を剥き出しにして怒らないでください。」
「シャー!」


睨めっこ状態のムウ様に向かって、目を細めた顔で怒りの鳴き声を上げるアイオリア様。
ムウ様は苦笑いを浮かべて、直ぐに膝の上にアイオリア様を戻すと、丁寧なブラッシングを再開した。
怒りで細められ吊り上がっていた目は、細められたまま目尻が垂れ下がっていく。
余程、気持ちが良いのですね、ムウ様のブラッシングは。


「ミミャミャッ。」
「ムウ様。そろそろ交代して欲しいとシュラ様が言っているようですが……。」
「仕方ないですね。はい、アイオリアは終わりです。」
「シャー!」


強制的に退けられたアイオリア様を抱き上げ、代わりに、反対の腕で抱っこしていた黒猫ちゃんをムウ様の膝の上に下ろした。
嬉々として両の前足と後足を伸ばすシュラ様。
そして、膝の上で長々と横たわった猫ちゃんを、ムウ様がブラッシングし始める。
直ぐに、シュラ様の喉奥からゴロゴロと気持ち良さそうな音が聞こえてきた。


「幸せそうですねぇ。何の悩みもないのでしょうか、この猫は?」
「そ、そんな事はないと思いますけれど……。猫ちゃんになってしまったからといって焦らず、その姿での生活を謳歌するのがシュラ様ですから……。」
「成る程、神経が図太いという事ですか。」
「ゴロゴロゴロ……。」


こんな事を言われたなら、いつもなら直ぐに怒りと抗議の声を上げる黒猫ちゃんなのだけれど。
今は全く気にもせず、心地の良いブラッシングに集中している様子。
相手がムウ様だからでしょうか。
これがデスマスク様に言われたなら、直ぐにも怒り狂っている筈。


「嫌味を言っても、全く意に介さずですね。」
「怒るのが面倒になるくらい、ムウ様のブラッシングが気持ち良いのでは?」
「そうですかねぇ……。」


呆れを含んだ声を吐き出し、それでも、ムウ様はブラッシングの手を止めない。
私は腕の中のモフ猫ちゃんの、フワッフワになった背中を撫で回しながら、ムウ様と黒猫ちゃんの姿を眺めていた。
未だ心地良さの抜けていない様子のアイオリア様は、半分、ウトウトとしていて、今にも寝落ちそうだ。


「アンヌが言う程、暴れ猫ではないのでは、この二匹?」
「いえいえいえ、そんな事はないです。今が大人しいだけです。」


巧みなブラッシングで懐柔されているだけ。
ムウ様が現れる直前まで、二匹で光速追い駆けっこしていて、呆れたデスマスク様に強制的に捕獲されていたぐらいですから。
光速追い駆けっこは勿論、光速猫パンチの応酬、猫姿での必殺技の繰り出し合い、等々。
本当に手が付けられません、この猫ちゃん達は。


「光速猫パンチの喧嘩は、ちょっと見てみたいですね、フフフ。」
「笑い事じゃないです。猫パンチ合戦が始まると、私じゃどうしようも出来ないんですから。デスマスク様か他の黄金聖闘士様にお願いしないと止められないんです。」
「癒される事もあれば、困り事も多くある。普通のペットでもお世話するのは大変なのに、中身がシュラとアイオリアですからね。アンヌの苦労も倍増しでしょうね。」


ムウ様はクスリと笑みを浮かべたままブラシを置くと、シュラ様の艶々した背中を撫で擦り始めた。
数度、手を滑らせて往復した後は、その黒く短い毛を摘まんでは、ベルベットのような毛並みを指先で確かめている。
心地良さにグデッと伸び切った黒猫ちゃんは、元より細い目を更に細め、半分、夢の世界に落ちているようだった。


(つづく)


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