闇のリズム的にゃんぱにな新騒動40
2020/12/16 01:28


「ほら、シュラ様。ブラッシングは終わりましたよ。」
「…………。」


目を細めてムウ様の膝の上に居座り続ける黒猫ちゃんを促すも、まるで聞こえていないかのように目を開く事もない。
無視ですか、そうですか。
仕方ないので、長くて細い前足を両手で掴み、ムウ様の膝の上から引き摺り下ろそうとしたのですが……。


「おお、これは良く伸びますね。」
「ミミャッ。」
「ミミャじゃないです、シュラ様。早く下りてください。」
「ミャッ。」


どういう原理か、引っ張れば引っ張るだけ伸びる両の前足。
それだけ引っ張られても、テコでも動こうとしないシュラ様は、平然とした顔で、されるが儘に引っ張られ続けている。
とはいえ、猫ちゃんの前足が永遠に伸びる訳でもなし、最終的にズリズリとムウ様の膝から落ち始め、前足に続いて胴体がヌルリとソファー下に引き摺り下ろされていった。


「胴体まで、こんなに伸びるんですね。最早、猫とは思えない程の伸びようで、正直、驚きです。」
「ミミャッ。」


『猫は液体』とは良く言ったものです。
この黒猫ちゃんの姿を見ていると、まさに液体としか思えない。
ヌルリと伸びて落ちていく、この感じ。
液体というよりは、まるでスライムのようだ。


「アンヌ、口に出ていますよ。シュラが怒っています。」
「す、すみません! このヌルリ感を見ていたら、つい……。」
「ミミャー!」


私の暴言への怒りで身体を強張らせた黒猫ちゃんは、ヌルリとした液体状態から、一瞬にして、元の猫の身体に戻っていた。
そのままスタスタと床を歩いて行き、心地良さげにウトウトしているモフ猫ちゃんへと近付いていく。
そして、まるで怒りを発散するかの如く、ノンビリしているアイオリア様の頭をムギュッと踏み付けた。


「ミャッ!」
「ミッ?! ミミーッ!」
「ミギャッ!」
「こらこら、大人しくしなさい。アンヌが困ってます。」


下らぬ事で猫競り合いを始めた二匹を目の当たりにし、ムウ様が苦笑いを浮かべながら、アイオリア様からシュラ様を引き離す。
苦笑いでありながらも、ちょっと嬉しそうな表情にもみえるムウ様。
可愛い猫ちゃん二匹の、可愛い争いに、ホッコリしているようだ。


「そのまま少しだけ放っておけば、光速猫パンチも見られたかもしれませんよ。」
「興味はありましたけどね。彼等が喧嘩するようでは、私がココに居る意味がなくなってしまいますから。」
「そのお言葉、デスマスク様にも見倣って欲しいものです。」


シュラ様とアイオリア様が険悪になっても笑って見ている、寧ろ、煽って楽しんだりもしますしね、あの方。
まぁ、デスマスク様は猫ちゃん達の扱いにも慣れていますから、そんなに慌てる事もないんでしょうけれど。
それにしても、もう少し監視役としての自覚も持って、猫ちゃん達を見てくれても良いと思います。


「デスマスクに、それを求めるのは無理でしょう。まぁ、私のようにシッカリ見ているばかりでは、シュラとアイオリアに大量のストレスが掛かってしまうでしょうから、程良く緩く見ているのも大事なのでは?」
「確かに、ストレスは多くなりそうですね、特にアイオリア様は。猫の姿を謳歌しているシュラ様は兎も角として。」
「ミギャッ!」


俺だってストレスは感じている、とでも言いたげに、目を怒りで細めて右の前足を振り上げる黒猫ちゃん。
しかし、その腕はスカッと空を斬った。
ムウ様に抱っこされた状態では、少しだけ距離を取っていた私には、その手が届かないのだ。
今度は私が苦笑いを浮かべ、床をウロウロと歩き回っていたアイオリア様を抱き上げ、その背中のモッフリとした毛に顔を埋めた。


(つづく)


‐‐‐‐‐‐‐‐

([←]) * ([→])

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -