聖域リーマン物語52
2020/10/22 01:25

ブラコン兄貴の事は、まぁ仕方ない。
取り敢えず、リアに必要なのは女の子との出会いの場だ。
仕事上の出会い、例えば美人看護師さんや医療事務さんとの出会いが望めない以上、何か別のルートを探さなければならないのだが……。


「キミ達さ、確か土曜日に練習試合だとか言ってなかった?」
「あぁ、そうだが……。」
「それがどうかしたのか?」


ニコリと浮かべた微笑は、目が眩む程に麗しいディーテなのだが、付き合いの長い仲間達には見えている。
その瞳の奥がキラリと輝いているのを。
そして、そういう表情を見せる時のディーテは、何か企んでいるという事も、仲間達には良く知られている事実。


「また良からぬ事を企んでいるのだな、ディーテ。」
「良からぬ事なんかじゃない。とっても良い事さ、リアにとって。」
「俺にとって?」


より一層、嫌な予感が深まり、リアはその立派な眉毛を潜め、眉間に深い皺を寄せた。
意を決し、ブラコン兄貴と対決しろとでも言い出すのか。
体力も、体術の技術も、戦略を練る知力も、兄には遥かに及ばない事を、ちゃんとリアは自覚している。
それを理解しているが故に、一度、ポーカー勝負を挑んだ事があったが、ニコニコ笑顔の裏に全ての感情を隠せるロスと、何もかもが顔に出てしまうリアでは、全く勝負にならなかった苦い過去もある。
ディーテが思い付くような怪しい勝負なら、尚更、兄が有利なのではないかと、リアが疑うのも無理はなかった。


「練習試合で兄さんと勝負しろとでも言いたいのか?」
「違う、違う。例え、キミの得意なフットサルといえど、あの出鱈目なまでの運動神経と無尽蔵の体力を持つロスには敵わないかもしれないだろ? だから、そっちは後回し。」
「後回しをして、どうする気だ?」
「リアにお似合いの可愛い女の子を見つける事から、先に始めるって事だよ。」


練習試合に女の子達を呼ぶ、そして、フットサルをしている格好良い姿を見てもらう。
リアはチームで一番の得点力を持ち、目立つポジションにいる。
フットサルやサッカーを良く知らない子でも、リアの活躍する姿は目に留まるだろう。


「例えば、シュラの同僚の女の子とか、カミュの教え子の女の子とか、練習試合の見学に来ないかと誘ってもらうのが良いんじゃないかと思ってさ。」
「大学の教え子なら無理だな。皆、土日はバイトが入っている子が殆どだ。」
「うーん、学生は難しいか。じゃあ、シュラは?」
「俺の誘いなどに乗る同僚の女はいない。どうやら俺は『ヤ』の付く職業の御曹司か何かだと噂されているらしくてな。」


まさか陰でコソコソと噂していた事が全て本人に知られているとは、シュラの会社の同僚達も思ってはいるまい。
人の噂など気にしそうにない、我が道を突き進みそうな、そんな男でありながら、意外と色んな情報を握っているのがシュラだ。
人事部研修課の主任という立場上、実は会社の中では、社員達の情報を多く掴んでいるのだった。


「仕方ないな。そこはミロの友達とかモデル仲間とか、デスの女の子人脈を使うとしよう。」
「お前の女人脈も使ったらどうだ?」
「私に女の子の人脈なんて無いよ。」
「嘘を吐くな。」


ディーテのニコニコ微笑が、一瞬だけニヤリ笑いに変わったのを、三人は見逃さなかった。
この分だと、彼は絶対に自分の人脈を使う事は無いなと、皆は確信した。


(つづく)


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