闇のリズム的にゃんぱにな新騒動38
2020/09/29 01:23

デスマスク様とミロ様が、仔猫ちゃん達を連れて出て行くのを見送った後、戻ったリビングでは、ムウ様が二匹の猫ちゃんに挟まれて困った顔をしていた。
ソファーに座る彼の右側に黒猫姿のシュラ様、左側にモフ猫姿のアイオリア様が陣取り、ニャーニャーと鳴き声を上げながらムウ様の事を見上げている。


「ミミャー。」
「ミミー。」
「何ですか、二人共。私に何か訴えたい事でもあるのですか?」
「執務とか、任務とか、当番の事が心配なのでは?」
「ミャー。」
「ミー。」


それならば心配は無用です。
ムウ様は優雅に微笑み、両サイドの猫ちゃんの頭を撫でた。


「我等、黄金聖闘士が行かなければならないような危険度と緊急度の高い任務は、今のところ、舞い込んできていません。執務も、珍しくシャカが手伝いに入っているようですから、サガもアイオロスも無理はしていないでしょう。」
「そうですか。暫くは大丈夫そうですね。」
「ミャー。」
「ミー。」


現状を聞いた安心感からだろうか。
ムウ様の両サイドから、猫ちゃん達が小さい頭をスリスリと擦り付け始めた。
何だかムウ様には妙に懐いていますよね、お二人共。


「もしかして……、聖衣に付いた傷を修復して欲しくて、可愛い姿の内にゴマをすっているのでは?」
「ミギャ!」
「ミミッ!」
「心外だ、と仰ってるようですが……。」
「疑ってしまい、すみませんでした。お詫びにブラッシングでもしましょう。」


そう言うと、ムウ様は近くに置いてあった猫ちゃん用のブラシを手に取った。
左側からスリスリを続けるアイオリア様を、御自分の膝の上に引っ張り上げると、その背中を、ゆっくりとブラシングする。
直ぐにゴロゴロと喉を鳴らし始めたモフ猫ちゃんは、目を糸のように細め、とても気持ち良さげだ。


「ミャー。」
「何ですか、シュラ様?」
「ミミャー。」
「順番ですよ、順番。アイオリア様が終わったら、シュラ様もブラッシングして貰えるのですから、もう少しだけ待っていてください。」


などと言い含めても、言う事を聞かないのがシュラ様だ。
待つ事が嫌になって、ウトウトするアイオリア様に攻撃だってしかねない。
そうなる前に、私は黒猫ちゃんを無理矢理に抱っこし、腕の中に閉じ込めた。
こうしておけば、ヤンチャな黒猫ちゃんといえど、簡単にはモフ猫ちゃんに手は出せない。


「ミミャミャ。」
「はいはい、今度は何の催促ですか?」
「ミミャ、ミャ。」
「背中を撫でれば良いのですか? こうですか?」
「ミャー。」
「アンヌは猫語が分かるのですか。凄いですね。」
「いえ、何となくです……。」


強面で無表情で何を考えているか分かり難いと言われるシュラ様ですが、中身は意外と単純ですからね。
だが、そんな事を言ってしまっては、盛大に怒って暴れるでしょうから、口に出しては言わないけれど、どうやらムウ様には表情で伝わった様子。
ブラッシングの手は止めず、苦笑いでコチラをチラチラと眺めている。


「猫ちゃんになると、不思議とアイオリア様への対抗意識が、より高くなるみたいなんです。その逆も、ですけれど。」
「元々、互いへの対抗意識は強い二人ですが、それが、より顕著になると?」
「はい。どちらも『我先に!』といった様子で、抜け駆けされると激しく怒ります。今も、ブラッシングがアイオリア様の方が先だったので、シュラ様は非常に不服みたいですよ。」
「成る程、我が強くなっているのですか……。」


何やら興味が湧いてきたのか、ムウ様はピタリとブラッシングの手を止めた。
膝の上に伸びていたモフ猫ちゃんを、御自身と顔を突き合わせるようにして、眼前に掲げる。
中途半端なところでブラッシングを止められたアイオリア様は、今度は不満を主張するために、その目を細めてムウ様を睨んだ。


(つづく)


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