結婚式
白を基調とした綺麗な建物だ。今日ここで幼馴染の結婚式が執り行われる。子どもの頃から関わりのある俺たちは、新婦の控え室に呼ばれ、準備の整った状態の幼馴染に会った。父さんは綺麗だなぁ綺麗だなぁと何度も繰り返し言っているし、母さんはまだ式が始まってもいないのにすでに涙を浮かべていた。トト子ちゃんが「なんか地味じゃない?もっと派手なドレスでもよかったのに」と優しい顔で笑っていて、5人の兄弟たちも祝福の表情だ。

「じゃあ、おそ松兄さん。僕ら先に行ってるから」

チョロ松がいらない気を利かせて、俺を一人控え室に置いていった。アンティークな鏡の前に腰掛けた真っ白の彼女が柔らかく笑っている。

「ねえね、どう?」

綺麗かな?と頬を染めた。それは俺に聞いているのか、それともあの男に対しての言葉なのか。そりゃあ綺麗に決まってる。世界で一番、俺が知っている限りのお前の人生の中で一番綺麗だよ。そのまま言えればどんなに楽か。俺は細い腕を引っ張って、セットしたばかりの頭も気にせずに引き寄せて、無言で彼女を抱きしめた。

「やだなぁ。私、お嫁に行くんだよ」

好きだった。あんなやつよりずっと前から、お前のことを見てたんだよ。言葉にできなかっただけなのに、どうしてお前が遠のくんだよ。俺の気持ち気付いてなかったの?

「行くなよ」

泣きそうな顔をしている幼馴染のことなんか無視して顎に手を添え、グッと持ち上げた。ピンクのリップにキラキラとグロスが輝く唇に、噛み締めていて血が滲んだ俺の唇を押し付ける。いつまでそうしていただろうか。名残惜しそうに彼女の唇が離れていって、控えめに俺の肩を押した。小さく溜息を吐いた彼女は涙を流していて、俺の目を見るとそっと笑った。

「おそいよ、ばか」
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