妹と星を見上げる長男
「おそにい、眠れないのぉ」
妹の話し方は、俺とよく似てる。なんだか寝付けなくて部屋を抜け出して屋根に上って柄にも無く星を眺めてた。星座なんてなんにも知らなくて、ただ散りばめられた輝く粒を数えているだけの夜だった。少し体が冷えてきたなぁなんて思っていると、パジャマのままの妹が「風邪ひくよぉ」と俺のために持ってきた赤のどてらを肩にかけてくれた。
「あんがと」
妹のさらさらの髪を撫でてやると、気持ちよさそうに、それでいて眠たそうに、妹が目を細めて笑う。
「おそにいは星座なんて知らないと思うけど」
話し始めから少し小馬鹿にしたような妹の態度に「いう必要ある?」と苦笑いをする。くすりと笑った妹が続けた。
「あそこで明るく光ってるのがこと座のベガだよ」
ふーん、妹の話す星座なんて殆ど興味がなかった。そんな俺の心を見抜いたのか少し呆れたように「織姫さまだよぉ?」と口を尖らす。
「そーなんだぁ」
「織姫と彦星は一年に一回しか会えないけど、私とおそにいは毎日こうして会えておんなじ家で寝れて、幸せだねえ」
ごろんと妹が俺の方に頭を乗せた。甘えたような声で「だぁいすき」と呟くとしばらくしてすうすうと寝息をたてはじめる。体を傾けて妹の唇にキスを落として、まだシャンプーの香りが残る髪の毛に頬擦りをした。
織姫と彦星なんかよりよっぽど試練だらけの運命が待ってるって言うのに、お前はそれを幸せだと言うんだから、やっぱりお兄ちゃんはお前を選ぶよ。
*<<>>
TOP