0811
「今日はなまえの誕生日なんやで、ロマ〜」
あの子が来てからいつもそう。なんでもかんでも、ロマーノロマーノって、台詞の最後にハートマークを忘れずに。
最初のうちは私だって嬉しかった。
弟ができたような気分になって、いつもロマーノを連れて歩いてた。
親分もそんな私を見て、嬉しいなあ、かわええなあって頭を撫でてくれたのに。
私はどんどん大きく育って、親分との背丈の差も大分縮まってしまった。
「なまえ、今日誕生日なんだってな。折角だから俺出掛けてこようか?」
「なにそれ、意味わかんないんだけど」
「意味わかんねぇも何も…、っておい、なまえ!?」
こっちは冷たくしてんのに、無邪気に話しかけてくるアイツにイライラした。
私のことは昔みたいに甘やかしてくれないのに、ロマーノのことは相変わらず甘やかしているアントーニョにイライラした。
どうしてあたしだけ、と頭を抱えた。
「なあなまえー。親分今からちょっと出掛けるんやけど、留守頼んでもええ?」
何よ。なまえの誕生日やでって言ってた癖に。
祝ってくれるんだと思ったのに…。
何も言わずに黙っていると、アントーニョが不思議そうな顔をした。
「なまえ?あ、せや。ロマーノも行くから…」
また、アイツばっかり…。
「酷いよ…」
「え?」
「酷いよ、アントーニョ!もう知らない!アントーニョの馬鹿ッ!」
「な、何怒ってるんなまえ!」
「馬鹿馬鹿!もうどっか言って!」
「言わな、分からんって…」
「なまえ…?」
「アンタも、出てってよ!」
ロマーノも追い出して、扉を閉める。
此処は親分の家だから、彼は帰ってこようと思えば帰ってこれる。
「なんやねん、アイツー!」
ぶつぶつと聞こえてくる文句を聞きながら、家の内側から鍵を閉めた。
またやってしまった。
アントーニョ達が家を出ていってから二時間ほど経った。
彼らはまだ帰ってきていない。今までのこの二時間。
私はずっと後悔しっぱなしだった。
なんでもっと優しく出来なかったんだろうとか、なんでもっとちゃんと話を聞かなかったんだろうとか。
よくよく考えてみれば、最近の彼との喧嘩でアントーニョが全部悪いときなんて思い付かないし、大抵は私が一人で怒って、それからアントーニョを怒らせる。
そればかりだった。
こんな態度をとり続けていたら、いつか嫌われてしまうかもしれない…。
膝を抱えて溜め息を吐くと、一階でばたんと扉の閉まる音。
「ロマ〜、ちゃんと手洗いうがいやでー」
「分かってるよ、うるせえなあ」
謝らなきゃ。
やっと決心して、大きく深呼吸。
階段をゆっくり下った。
「あ、あの。アントーニョ、おかえり。」
「ん?あぁ、ただいま」
あまり機嫌が良いようには見えないアントーニョは、ソファーの上で寝転んで、古いアルバムを眺めていた。
その横にロマーノも腰掛けて、アルバムを手にしている。
なんのアルバムだろう。
気になって横から覗いて見たのは間違いだった。
その写真は私の記憶が正しい限り、ロマーノの小さい頃のもの。
「可愛いやろ、なまえの小さい頃やで」
耳を疑った。
私の小さい頃?
これが私?
「あれ、なまえには見せたことなかったっけ。ほら、小さい頃はこんなに可愛かったのになあ」
「お、おい、アントーニョ!そんなこと…!」
ロマーノが慌てて止めにはいる。
昨日までの私だったらもちろん怒ってた。
でも、今は…。
「親分…」
「ん?」
「ごめんなさいっ!私、親分の気持ち全然分かってなかった。親分はロマーノばっかりだって、いつも嫉妬ばかりしてた。ごめんね」
ロマーノがビックリしてる。
親分は、ははっと笑って、立ち上がった。
「小さい頃のロマーノはな、小さい頃のなまえにそっくりやった。なまえはどんどん立派な女の子になってまうし、ちょっと寂しかったんやな、俺」
「私も、寂しかった。親分がロマーノしか見てくれてないんだと思って」
「なまえ、俺はなまえもロマーノもずっとずっと可愛い子分なんやで?」
「親分〜…」
「寂しい思いさせてごめんな」
涙を流す私を親分は強く抱き締めてくれて、私は親分の腕の中でたくさん泣いた。
「ほな、行くか、なまえ!」
「え、何処に?」
「そんなん決まってるやろ!なまえのケーキとプレゼント買いにや!ロマと二人で選ぼ思ったんやけど、なまえと喧嘩してもうたし、帰ってきたんや。なまえの好きなもん買ってやるからな!」
そう言って歯を見せて笑った親分は、小さい頃みた親分の太陽みたいな笑顔そのもので、私は久しぶりに親分とロマーノの手を握った。
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むくげさんお誕生日おめでつとうございます^^
これからもよろしくおねがします(*´ω`*)
応援してます!大好きです!//
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