ぷりーずいーとみー!
「総帥!バレンタインですよ、バレンタイン!」
総帥のベッドに潜り込んで言うが、総帥は心底鬱陶しそうに私を見ただけで目を瞑った。
「え、あの!総帥!?」
寝起きの総帥はいつものように私を見下して鼻で笑ったりしない。
とても貴重な一面だ。
でもこんな素敵なご褒美に惑わされている程、私は暇ではないのだ。
「ねえ、そうすいー!構ってください〜きゃっ!」
ぼふん!と私の頭は総帥の胸に埋まった。
総帥の匂いでいっぱいだ。
「うるさい、黙れ」
ぼそりと総帥の口から私への罵倒の言葉が落ちてきた。
残念なことに、私にはそういうモノがあるらしく、その言葉にさえ胸は高鳴ってしまう。
それから総帥は何故か右手をずいと私の方へ付き出してきた。
「な、なんですか、その手は」
問うと、私の言葉に総帥は少しだけ顔をしかめてそれはもう面倒極まりなさそうに、重たい口を開く。
「今日はバレンタインなんだろう。愛する私にプレゼントがあるんじゃないのか?」
「…総帥って結構可愛いですよね、」
「黙れ、ませガキが」
総帥は言葉とは全く反対に、私の髪を撫でて頭に頬擦りをしている。
そして私は総帥がよくやるこれが好きだったり。
「でも総帥は甘いものお嫌いでしょう?だからチョコレートはやめたんです」
「ほう…。まあ確かに甘いものは好まないな、」
「だから、特別に総帥には私特製のプレゼントをご用意致しましたあ!」
じゃじゃんと自分の口で効果音を付けて、後ろに隠していた溶かしてどろどろになったチョコレートを出す。
「はい!チョコプレイですよ〜!総帥、えっちしましょう!」
総帥は徐々に顔を歪めた。
私のことを冷めた目で見て、一言、言った。
「引くな…。中学生風情が生意気な…」
「ひ、酷いじゃないですか!総帥の馬鹿!」
「お前よりは、頭の出来は良いと思うがな」
「それも…、そうですね。でも、それとこれとは話が別です!」
「何が別なんだ」
総帥には口では勝てないことは目に見えているので、ここらで口喧嘩は中断だ。
私は真っ白のシーツからは目を反らして、ボウルのチョコを肩からかけた。
「お前…」
「どうですかあ、総帥?ムラムラしてきました?」
「…くだらん」
「って言いながら、触ってるじゃあないですか」
総帥の手が私の頬のチョコに触れ、甘ったるいそれを拭って、その指を口に含んだ。
「えっちですね、総帥」
無視である。
総帥は無言のまま、再び私の頬を手で覆い、顔を近付けた。
「ちゅうしてください」
「言われなくてもそのつもりだ」
総帥が私の下着をまくり上げた。
チョコレートをかける前にあらかじめ服を脱いでいたので総帥もらくちんである。
「っん、は…。そーすい、好き」
「…私もだよ」
こんな所、有人にでも見せたら話しかけて貰えなくなるので総帥と恋仲であることは皆には秘密。
まあ、私は言っても良いのだけれど(有人はなんとなく気付いてそうだし)、総帥が嫌がる。
こう見えて、恥じらいとかあるのかとか考えるとやけに総帥が愛おしい。
可愛いななんて余裕ぶっこいてたら、「考え事とは余裕だな、」と総帥が笑ってがぶりと噛みついてきたので肩が跳ねる。
「フッ…甘いな、なまえは」
チョコが付いていない所だったのにな。
私の肌は甘いらしい。
まあそんな私にだって、自分の体に付着しているこのチョコよりも、総帥と二人のこの空間のほうが、何倍も甘ったるく感ぜられたのだけれど。
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