うん、好き!
「倉間先輩って彼女居るんですね」
「はっ?」
突然、狩屋の口からそんな言葉が飛び出して来たから驚いた。
「居るんですよね、先輩」
「い、居たらなんだよ」
「いや、可愛い人だなあと思って」
狩屋は涼しい顔をして、呟く。
そんな狩屋とは正反対に、俺は体を硬直させて椅子を倒しながら立ち上がった。
「お前、なまえに会ったのか!?」
「へえ、なまえ先輩って言うんですかぁ」
「お、おまえ…!」
してやられた、まさにそれだった。
うっかり厄介な奴に名前を教えてしまった。
「あの身長だと、倉間先輩ととっちが大きいんですか?」
「狩屋、お前な…先輩を馬鹿にするのもいいかげんに…、」
「倉間〜?」
狩屋の服の襟を掴んでやろうとした時に扉が開いて、ハッと息を呑む。
「なまえ!」
「あ、倉間、迎えに来たよー」
「来んなって言っただろうが、外で待ってろ!」
「あ、蘭丸ちゃん!久しぶり〜」
「久しぶりだな、」
「人の話を聞けぇ!!!」
声を張り上げると、なまえは肩をびくりと大きく震わせ、浜野は大袈裟に耳を両手で塞いだ。
「うるさいっちゅーのっ」
「どうしたの、倉間〜」
「あ、おい、なまえ!くっつくな!」
なまえは俺の腕に自分の腕を絡ませて、頬をすりよせる。
「イチャつくならどっか他でやってくださいよ〜」
「倉間、お腹すいたー。鶴ちゃんに叱られたし、帰ろ〜」
なまえが俺にかけている体重がずしりずしりと段々重くなっていく。
「分かった分かった!重いから離れろ!」
「やだー」
「わがまま言うな!しっかりしろよ、ふらふらするな、なまえ!自分で歩けっつーの」
なまえは、駄々っ子のようにいくつかわがままを並べた後、やっと自分で歩いてくれた。
まあ、もう家に着くけどな。
「なまえ、着くぜ」
「倉間、泊まってくー?」
「は!?泊まるわけねーだろ、ばか!なに考えてんだよ!」
「倉間こそ、考えてたでしょー?へんなこと」
なまえのまんまるな目が、俺をじっと見つめる。
「好きな女と二人きりで変なこと考えねー方がおかしいっつの」
なまえの頬が赤く染まっていく。
どうやらそれは、俺も同様のようだ。
「倉間、好き」
「…俺も、」
呟くとなまえが幸せそうな微笑みを見せて、唇と触れた。
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