おしまいで始まり
突然、俺の前に舞い降りたのは、天使のように綺麗な女の子。
軍服?のような不思議な服を着た彼女に、俺は一目で釘付けになった。
そしたら、彼女は俺と目が合うなり、俺の肩をどんっと突き飛ばしたんだ。
「みーつけた」
女の子の力とは思えない程の、俺よりも遥かに強い力で。
泣きそうな、顔で。
「こんにちは、松風天馬」
俺の上に馬乗りになった女の子は、自分のことを説明した。
「私は、今から70年後の未来から来た」
私の名前はみょうじなまえ。君から、取り戻しに来たの。私の、大切なもの。


‐‐‐‐‐‐


「本当に強くならなきゃいけないのは、ココなんじゃないかな」
キラキラの笑顔にキラキラの、サッカー。
私は、あんなに綺麗な物を見たのは初めてで、彼に恋をしてしまった。
「円堂守、」
「なんだ?」
「私は、私は…あなたのことが、好きなの」
「うん」
「ありがとう。私に素敵なサッカーを教えてくれて」
「名前を教えてくれないか?」
「私、みょうじなまえ」
「いつまでも、覚えてるぜ、なまえ。何年経っても、お前らとサッカーしたこと」
「私も、忘れない。円堂くんと出会ったこと。楽しいサッカーをしたこと」


‐‐‐‐‐‐


「だから、あなたのことを許すわけにはいかない」
なまえは何かを考えていたのだろうか。
数秒だけ押し黙ると、俺の頭を挟むように置いた手を動かした。
その両手は、俺の頬を愛おしげに撫でて。
「許せないよ、あなたが。消えてくれ、」
ぽろり、となまえの綺麗な瞳から涙がこぼれ落ちる。
その雫は、俺の赤く染まった頬を濡らして、冷ましていく。
「こんなの、私が知ってるサッカーじゃないっ」
苦しい。
なまえの手が、俺の首をぎゅうぎゅうと絞め始めたからだ。
酸素、酸素、酸素が、欲しい。
「それよりも何よりも君が欲しい」そう言ったら、なまえは一瞬びっくりして、それでも手の力は弛めずに。
「馬鹿みたい、」
なまえの涙がしょっぱい。
止まるどころか、どんどん溢れてくる。
気付けば、俺も大粒の涙をこぼしていた。
「私は、あなたのことなんか、少しだって好きじゃない」
なまえの力はさらに強くなっていく。
薄れていく意識の中、彼女が俺から手を離して、その手で涙を拭うと言った。
「革命の風なんて、私が止めてあげる」
ついに俺は意識を、手放した。
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