自己ベスト更新

いっそ気付かなければ良かった。良い匂いのする綺麗な試験監督に気を取られてセンター試験は散々だった。先生には絶対無理だって言われたけど二次試験の願書を出した。…で、気付いた。別にこの大学じゃなくても、もっとセンターの点数に見合ったとこにすれば良かったんじゃないか。天敵の親父はいるし、どうしてもここに入りたい理由なんてなかったのに。
「帰りたいっス…」
校舎の陰でいじけてショボくれても何の解決にならないのは分かっている。でも出てくるのはため息だけ。
「そこで何してるんだ?」
どこかで聞いたことのある声がして振り返ると信じられない光景があった。何度も夢に見た、センターを失敗する原因になった人が立っていた。
「ティーダ?」
「う…うわあぁぁぁん」
見た瞬間、思わず泣きながら飛び付いた。腕にすがりついて溢れる感情のままに声を上げるとふわりと抱きしめられた。あの時の良い匂いだ。その匂いに包まれて落ち着くまでわあわあと泣いた。
彼は辛抱強くティーダを抱きしめてくれて、何とか話せるようになる頃には要領を得ない話も聞いてくれた。
「もうダメっス…ここ、じゃなくて…別にすれば」
黙って話を聞いていた彼はティーダの頭を撫でて微笑んだ。それは泣くのも落ち込んだ気分も吹っ飛ぶ程の美しさだった。
「無責任に大丈夫っては言えないが…縁があってここにいるんだし、もう少しだけ頑張ってみないか。ダメだったら一緒に泣いてやるから」
一緒に…
「本当?」
彼の手は温かくて気持ちが良かったし、またこの手が撫でてくれるならそれも良いような気がしてティーダは立ち上がった。そして彼の手を取り思いの丈をぶつける。
「一緒に来てほしいっス。で、見ててほしいっス」
「ああいいよ」
「やったー」
そして足取り軽く教室に向かう。彼も後ろから穏やかな笑みを湛えてついてきた。うん、きっと大丈夫。だって最強の勝利の神様がついてるんだから。今日はいつも以上の力が出せるような気がする。

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