合格発表前の意思確認

もう張り出されただろうか。
クラウドは研究室の窓から合格発表が張り出されるであろう広場を見渡した。
そこには何人かの大学側の人間と、高校生らしき制服を身につけた人間がいるのが見えた。

『…合格発表、か?』

デスクに座っていた教授がクラウドの行動を感じ取ったのだろう。席をたち、窓際にいるクラウドに近づいた。

『お前がセンターの試験監督に引き続き二次試験の監督をもやると言ってきたのは、あの男の為か?』
『……なんとでも』
『気になるのだろう?』
『…まだ業務中』

セフィロスという名の教授は、クラウドの肩に手をやり、窓の外を見た。

『見てきたらどうだ?』
『え…』

まさか行かせてもらえるとは思っていなかった。
今日は講義がない日だったにも関わらず、セフィロスに前々から今日は研究室で手伝いをしろと言われていた。
スコールには朝試験監督の仕事がある、と言って出てきたクラウドだったが、スコールの合否判定はすごく気になっていた。

『見てきても…?』
『あぁ。だがその前に、』

セフィロスはクラウドの顎に手をやり、顔をあげさせた。二人の視線が交差した。

『就職活動は?』
『……一応してる』
『周りがしているからしているといったところか?』
『あんたには関係ないだろ』
『関係あるから聞いている』

セフィロスは白衣のポケットからメモリーカードを取り出した。

『お前の卒論は素晴らしかった。このまま終わらすには惜しい』
『……』

クラウド自身、今学んでいることが好きであるし、正直就職しようか院に進もうか悩んでいる。
しかし、

『…就職して、支えてやりたいんだ』

誰を、とは言わない。
たぶん、セフィロスは気づいている。
そうでなければセンター二日目にあんなことを言うはずがない。

『就職したらまた歳の差を見せつけられて向こうがお前に嫌気がさすかもな』

それも、もちろんクラウドはわかっている。

『院に進め、クラウド』
『……』

ふと窓の外を見た。
外が賑わってきた。

『院に進めば、あの男と過ごす時間は今より増える。好きな研究が続けられる。不利益は何もないだろう?』
『……っ!』

最後の台詞を低い声で、優しく、耳元に囁かれた。
クラウドは咄嗟に耳をかばいセフィロスを押しのけた。

『ふ、まぁいいだろう。時間はまだある。クラウド、お前の好きにすればいい』

セフィロスはククっと笑った。

『休憩は30分だ。早く行ってこい』
『……はい』

そう言われて、クラウドは研究室を出ていった。
部屋の中には、セフィロス一人。

『やりたいようにやればいい。だが、私はお前を手放すつもりはないぞ。クラウド』

不敵に笑う、その表情は美しくもあり、怖かった。
教務課に問い合わせれば、クラウドの就職活動の記録や内定済みの企業の情報があるだろう。クラウドに与えた30分は、自分が行動するための30分でもあった。

『…スコール・レオンハート、か』

デスクの上にある、資料の一つを取り出し、写真付きの受験票や調べさせた書類に目を通した。

『クラウドはやらん』

それらの書類をごみ箱に投げ入れ、セフィロスは研究室から出た。



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