夏休みはやっぱり海9

インターホンが鳴ると同時にバンバンと何かを叩く音が聞こえた。でも、それはドアからじゃなくて、天井だったり壁だったり…
いい加減俺も耐え切れなくなってきて、
「いい加減にしろっ!」
って叫んだんだ。
それを境にもう何の音も聞こえなかった。
こんなに自分が疲れてるなんて思ってもいなかったから、またベッドに横になろうと思って、布団をめくったら、
「うわっ」
女の子が横になってた。いつ入って来たんだろうと思ってドアを見ると閉まっていた。そしてまたベッドを見ると女の子は消えていた。
見間違いか?
本当にそう思った。
そこに横になるのは少し気が引けたから、椅子に座ったんだ。背もたれに頭を預けて、一息ついて、眼を開けたら、白い壁中に真っ赤な手の跡がついていた。
「ひっ…」
声にならない叫びだったと思う。
鳴り響くインターホン。
勝手に開いていた窓。
ベッドに横たわっていた女の子。
そして数え切れない無数の手の跡。
あぁ、これが怪奇現象かってどこか冷静になった自分がいたんだ。
だって、手を握られながら耳元に声が聞こえたんだ。
『遊んで』
『遊んで』
『遊んで』
『ねぇ、遊んで?お兄ちゃん』
そこからは全く覚えていないんだ。いつの間にか寝てたんだよ。友達が何で椅子で寝てるんだ?って起こしてくれたんだ。時計を見ると友達が出ていってから15分しか経っていなかった。部屋を見回しても、赤い手の跡なんてなくなっていたし、何も変な様子はなかった。
一つ伸びをして椅子から立ち上がった瞬間、友達が叫び声をあげた。
「フリオニールっ!」
「どうした?」
「せ、せ、せ背中!!!」
「背中?」
見ると、Tシャツにくっきりと真っ赤な手の跡がついていた。
そのシャツは捨てたよ。
取っておくのも変だし。

「ってあんまり怖くなかったな、ごめんバッツ」
「おま、ごめんって…充分だぜ。ってかもう一つはちみにどんな?」
バッツの好奇心は旺盛である。
「その女の子がしてるんだろうけど、あれ以来学校とか、今も大学でもそうなんだけど、毎朝黒板に赤い手の跡がびっしりついてるんだよな」
「毎朝っスか?!」
「大学でもか?」
ティーダとクラウドは驚きの声をあげた。
「あぁ。俺毎日一限はとってるし、毎朝植物の世話があるから登校が早いんだよ。で行くとそうなってるから、学校についたらその子と遊ぶのが最初にやることだな」
「遊ぶって…」
「じゃんけんとかしてやると喜ぶよ」
「み、見えてるんスか?」
「全く見えない。けど遊ぶにつれて段々と手の跡が消えるから機嫌よくなってるんだなって」
「ってことは何か?お前に憑いてきてんのか?!」
バッツはフリオニールから距離をとった。つられてティーダとスコールも一歩後退った。
「フリオニールが傷つくぞ」
そういうクラウドもフリオニールの目は見なかった。
「本当に傷ついちゃうよ」
セシルは笑顔だった。
ウォルは無表情だった。
「見えないし、今はいない。どうやら大学に居座ってるみたいだから。今度紹介してやるよ」
フリオニールはそういうと俺のはこれでおしまい!と手を叩いた。




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