夏休みはやっぱり海10

明るいフリオニールとは対称に他のメンバーは無口になった。セシルの話よりは結末もすっきりしている。だが幽霊に紹介されてこっちに憑いてきたらどうしようと考えていた。
「では次は私が」
微妙な空気を入れ換えるかのように名乗りをあげたのは意外にもウォルだった。こういう企画には下らないと思いながら付き合うにしても、自ら楽しむようなタイプには見えない。
「…と言いたいところだが、残念ながら私は皆を満足させられる話を持ってはいない」
それを聞いたティーダがホッとする。年長者として何か言わなければならないという義務感から手を挙げたのだろうと思った。
「だが…」
遠くでぎしり、と音がした。それは酷くゆっくりとした動きでぎしりぎしりと階段を昇ってくる。一段一段確かめながらこちらに向かっている。
ティーダは思わず人数を数えた。1、2、3…全員いる。ここはジェクトの別荘だ。だから自分達以外には誰もいないはず。
「喚ばれるそうだな。こういう話をしていると」
階段を昇りきったそれは何かを引き摺りながらこちらに向かっている。もしかしてウォルの言うように、喚んでしまったのだろうか。ティーダがごくりと唾を飲み込む。それがやけに大きく響いた。
「こうして…輪になっていると端に一人増えている」
ウォルはティーダを見た。
「今数えた人数は本当に合っていたか?」
廊下を歩く音が止まる。ドアの前に何かがいる。中の様子を伺っているようだ。ティーダはもう一度人数を数えた。…あれ、全部で何人いたらいいんだっけ?
「ほら、そこに来ているぞ」
ウォルがティーダとスコールの間を指差す。と同時にドアが開いた。
「ひいぃぃぃっ」
全身の毛が逆立つ。体の中を冷たいものが通り抜ける。ほとんど声にならない悲鳴を上げると眩しい光に照らされた。逆光で見えないが知らない誰かが立っている。
「この家停電してるの?」
「…ルーネス?」
「あ、クラウド」
小さい少年が懐中電灯を放り投げてクラウドに飛び込む。クラウドは驚きながらもその少年を受け止めた。
「どうしてここに?」
「ジェクトに聞いたんだ。僕ね、一緒に食べようと思ってお菓子持ってきたんだ」
「あ、ありがとう」
菓子がたくさん入った袋を差し出すルーネスにバッツが突っ込む。
「誰?」
「後期から君たちと一緒に勉強する留学生だよ」
「ああ。今日我々が迎えに行ってジェクト教授に引き渡した」
セシルとウォルも知っているようだ。身元の確認が取れて緊張が解ける。ウォルがルーネスの来訪を知っていてタイミング良く話を切り出したのだと思うと上手いとは思ったが、ネタばらしをされるともう怖くはなかった。
「あーもう。びっくりしたっスね、スコール」
ぽんとスコールの肩を叩いても反応がなかった。
「あれ?スコール?」
揺すっても動かない。バッツがブレーカーを上げに走る。明かりが点いて皆が見たものは、恐怖のあまり目を開けたまま気を失っているスコールの姿だった。

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